働いてお金を貯める⇒それを取り崩して何とかしのぐ…という構想である以上、お金の心配から逃れることは出来ません。なのにその戦略で行こう!というアドバイスが人気らしいので不思議なものです…。
貯金は安心をくれることはないので、お金を稼いでくれるもの自体を増やしていきましょう。
一生懸命働いて貯める⇒取り崩して暮らし何とか逃げ切る、という作戦
結局、投資も起業もほとんどの人にとってはただコワい・得体の知れないものでしかないということなのでしょうか。老後資金はどうすれば用意できますか?と聞かれ、FPたちもムリにはそうした方法は勧められないでしょうから、答えもどうしても「古風なもの」になってしまうのでしょう。
マネープラスの家計相談としてFPに寄せられた「定年までの30年間、老後資金としていくら貯めればいい?【上半期ヒット記事】」の例は老後対策の案としては人気だそうで、その概要を簡単にまとめると、つまり定年まで何とか働き続けてお金を貯め、その資金を取り崩してしのいでいこうということになります。
相談を寄せた夫婦は30歳過ぎで子供二人を持つ共働き夫婦らしく、月収は二人合計で53万円、貯蓄約300万円に対し組んだローン残高が3,000万円と、ざっと数字を見たところ今どきの普通の家族といった感じですね。
老後のお金の心配が無いようにするためにはどうしたらよいかとの相談に対し、FPが出した答えは要約すると、定年までの約30年二人で働き続けていけば5,600万円近く貯まるので、定年後の5年間無職だったとしても支出に耐えられ、その後も何とかなる、といったものでした。
計算上は確かにそのようです。ただ、この試算には一つ大きな穴があります。
クビのリスクです。この夫婦はまだ30代に入ったばかりなのであと10年はそれほどクビを意識しなくても勤め続けられるかもしれません。ですが40代に入るとそうも行きません。昨年くらいからどこもパフォーマンスの落ち始める年齢の人員を大量に整理し始めているので、働き続けたいと望んでもそれが叶わない可能性があるのです。
とうとう早ければ30代から希望退職者を募っている例も出始めたくらいですから、今までわりと常識と考えられていた「60歳まで勤めて働く」も、変わってしまうかもしれませんね。働き続けることにはなるのでしょうが、それは「雇用」ではなく自営の形に変わっているかも…。試算の根拠となる「安定した定額の給料」がとても頼りないものに見えます。
現金は一度使ったら消えて無くなる
FPのアドバイス中には、貯蓄にはそれなりの力があるともされていて、仮にもし定年後の5年間(年金受給開始年齢に達するまでの5年間)だったとしても、 33万円×12ヵ月×5年=1980万円 の現金を使うことで乗り切ることが可能で、しかもそのあとの余命約30年も十分にカバーできるとあります。
計算上は間違いありませんが、5年で失う額をしっかりと見てください。約2,000万円です。
これがただ出ていくだけ。
その後の30年も計算通りにカバーできるのかもしれませんが、歳を取って現金がだんだんと乏しくなるのを見て、安心できますか?
おそらくかなり大きな不安を感じるはずです。お年寄りと話すと、お金のことが心配とよく聞きますが、その中には、それなりの額を貯めこんだ人も含まれます。
つまり、一度使ったら手元から消えてしまう現金を幾らため込んだところで、決して安心は得られないということです。
同じことは「クビ対策として貯金しよう!」といったアドバイスにも当てはまります。先程も触れた通り、早ければ30代で・40代にもなればクビリスクが一気に高まりますが、それへの対抗策としてそれへの貯金をしても、助けにならない可能性があります。
今のような状況ですと、長ければ何年間か再就職先が見つからないことだって起こり得るわけです。例えば2,000万円くらいあれば年間の支出が400万円くらいの人であれば失業しても、5年間は無職で居られるわけですが、そのあとはどうするのですか?
2~3年も仕事が見つからない状態であれば、歳を取ればとるほど再就職から遠くなってしまうものなので、そのあとさらに2~3年=計5年経って仕事が見つからず…となる可能性も高くなります。
「貯めたお金のおかげで5年もしのぐことができた」と、たしかにその力を発揮してくれるかもしれませんが、そのぶんの現金はそこで全て消えて無くなります。消えた「死んだ」ので、次の危機が来てももう助けてくれません。
再就職できたとしても、まずはまた同じように危機に備えるために何年もかけてお金を貯め直すところからやり直しになります。若い間はその繰り返しでも何とかなるでしょうが、歳を取ったらそれもできなくなります。減っては足して…の繰り返しだけでは苦しいだけです。
ずっとお金を稼いでくれるものを持つと
こうした「苦労を繰り返す」を避けるためには、お金にも働いてもらうという発想が重要です。
たとえばこの相談を寄せた若い夫婦の場合、年間80万円くらいは貯めることができているので、これと手元にある300万円を原資にすれば、いくつかの中古の戸建てなどの不動産をメインにして、年利換算で4~5%の配当が付く銘柄の株式をサブにして投資をすれば、不動産4つくらい×毎月3万円以上の家賃+どういう銘柄を組み合わせるかは別として株式から毎月平均で1万円以上の配当収入=毎月計十数万円の副収入を得られます。
40歳代でも何とか働ける期間中は同じように毎年80万円を投資の種銭として積み立てて、副収入の上がり全て再投資することで、この副収入の総額自体を毎年増やし続けていくことができます。
そうすることで、50になる頃にはどちらか一人は再就職できなくなったとしても生活は成り立つくらいになっているはずです。
現金とちがって資産は何度も使っても消えて無くなるなんてことはありません。適切にメンテ・リバランスしたりすればずっとお金を稼いでくれるので、何も生んでくれない現金よりも頼りになります。
使ったら無くなるものではなく、安心をくれる繰り返し使えるものを積み上げていきましょう。