デジタル通貨

JCBがテックファンド(TECHFUND)と業務提携をする目的

日本国内を中心にクレジットカードブランドを展開しているJCBと、ブロックチェーン事業を行う国内企業のテックファンドが業務提携を結びました。ブロックチェーンを活用して、未来まで持続可能な決済システムの構築を共同で検討するなどの、戦略的パートナーシップを締結するといった内容です。ここでは、2社の戦略的パートナーシップについて、もう少し詳しく説明します。

提携する2社のブロックチェーンに関する事業について

日本国内で有名なクレジットカードブランドを展開する金融会社として、知名度の高い株式会社JCBは、近年ブロックチェーン事業に力を注いでいます。2019年12月に、2023年導入予定のインボイス制度導入を見据え、ブロックチェーン技術を活用したB2B向け決済システムの導入を発表しました。適格請求書保存方式とも言われるインボイス制度は、適格請求書などの書類を税務署に提出して、仕入税額控除を受ける仕組みです。同年10月に食品などの生活必需品に限定して消費税率を低く抑えた軽減税率が始まりましたが、軽減税率を適用するための支出項目を確実に選別する書類を、適格請求書と呼びます。

このため、適格請求書等を適切に作成、保存するといった義務が発生し、税務署に提出する書類が増えます。また、軽減税率の開始によって、税率ごとに請求書を作るといった、区分記載や区分経理などを行う必要に迫られるなど、事業規模が小さい企業の場合、さらなる負担が予想されます。そういった事情を見据えて、クレジットカード事業者ならではのノウハウを活かし、中小企業向けのデジタル決済プラットフォーム開発に資源を集中させる動きへとシフトしています。

2020年1月には、大手電機メーカーの富士通株式会社と、仮想通貨並びにデジタル通貨に関する決済プラットフォーム開発の共同プロジェクトを開始しています。仮想通貨やデジタル証券、地域通貨を含む全てのデジタル通貨と、支払い時に貯まる店舗独自のポイントなどを含め、支払い時に適切な決済手段を選別できるようにする狙いがあります。また、富士通株式会社が開発したブロックチェーンの相互接続技術「コネクションチェーン」の実証実験にも参加しており、ブロックチェーンの実用化に向けての取り組みを、さらに加速させています。

株式会社JCBと業務提携を結ぶ株式会社テックファンドは、2014年10月に世界で初めて、技術投資によるスタートアップ企業を支援するための会社として創業しました。スタートアップ企業に対して、資金ではなく自らが持つITなどの技術を提供する、技術アクセラレーターとして、おおよそ10社への技術投資を行った実績があります。スタートアップ企業でのリーンスタートアップを応用し、事業アイデアによる事業化を目指す「アクセルプログラム」が、メインコンテンツです。

ブロックチェーンに関係する内容としては、ブロックチェーン事業を始めたい企業向けに対して、開発をサポートするためのクラウドシステムである「アクセル バース」が用意されています。

未来まで持続可能な決済システムの共同構築は双方にメリットがある

株式会社JCBと株式会社テックファンドが業務提携する理由として、両者が力を入れているブロックチェーンに関する業務を強化する狙いがあります。ネットショッピングから実店舗まで多くの企業が採用しているデジタル決済に関し、ブロックチェーンを最大限に活用しつつ、未来まで持続可能(サスティナブル)な決済システムを共同で構築するといった内容です。また、業務提携の範囲も、事業アイデアの創出に加えて、POCの実証実験、プロダクトの構築といった3段階に分かれている点が特徴と言えます。

株式会社テックファンドは、ブロックチェーン技術開発のサポートシステムに加え、ブロックチェーン上でトークン済みの証券(セキュリティ・トークン・オファリング)の開発技術を有しています。国の許可を得てトークン済みの証券を発行しているため、日本国内で安全に資産運用ができるなどのメリットをもたらします。また、事業スコアリングをもとにした機械学習に関する技術もテックファンドならではの特徴であり、そういった資源を決済システムの構築に活用し、さらなる事業拡大を狙う目的があります。

株式会社JCBにとっては、デジタル決済における様々な課題を解決するための方法を手に入れるといった側面があります。クレジットカードという決済手段を通じて、国内に相当数の加盟店や顧客を有しており、そういった加盟店ネットワークや顧客規模のネットワークで応用できるようになります。株式会社テックファンドの持つ技術を最大限に活かしつつ、ブロックチェーンを活用したB2B向け決済システムを国内の中小企業向けに低コストで提供するといったメリットもあります。

流通面や技術面の双方にメリットをもたらす

日本国内でクレジットカードブランドを展開する会社と、ブロックチェーン技術を多く有する会社との業務提携は、ブロックチェーン向けのデジタル決済システム構築において戦略的な提携と言えます。提携している中小企業向けに低コストで決済手段を提供できる他、自社開発の決済手段プラットフォームをスタートアップ企業に提供できるなど、双方の会社に高いメリットをもたらします。

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