デジタル通貨

暗号資産を立体的に理解するための2冊の入門書

暗号資産を理解するには、わかりやすい入門書を読むと良いでしょう。ネット上には「仮想通貨」もしくは「暗号資産」で検索すれば、さまざまな情報を得ることができます。ただし、それは往々にして断片的なものになりがちです。コンパクトな入門書であれば、知的な全体性をもって、バランスよく理解することができます。この記事では、2冊の入門書を紹介します。

暗号資産の「縦糸」を知るための本

ここでの「縦糸」とは、歴史的な時間軸に沿った物語のことを指しています。その縦糸としての1冊目は、伊藤穰一、アンドレー・ウール著の『教養としてのテクノロジー』です。この本は、NHK出版から2018年に出されている新書です。それほど大部な本ではないので、手軽に手に取れるのですが、内容は非常に充実しています。著者は2人とも、アメリカ・マサチューセッツ工科大学にあるメディアラボに所属しています。伊藤氏はその所長であり、ウール氏は研究員です。特に、伊藤氏はインターネットが世界に広がる黎明期から、その発展に尽力しつつ、見守ってきている人物として知られています。本書では、テクノロジーの発展とその可能性について「経済」「社会」「日本」が論じられていますが、その「経済」についてのサブテーマのひとつが暗号資産(仮想通貨)なのです。

伊藤氏は、これまでの暗号資産の経緯を次のように整理しています。まず、暗号資産のコンセプトは新しいものではなく、実は1990年代から「デジタル・キャッシュ」として話題になっていたとのことです。その理由は、インターネットにおける通信の「暗号化」が開発のテーマのひとつだったからです。当時、どの国でも通信インフラの整備には多大な投資が必要なため、国家事業として行われることが一般的でした。そうすると、回線の利用に関して、国営の電話会社が主導権を持つことになるのです。インターネットはそのような回線を利用するのですが、基本的な思想は自由なコミュニケーションの場を作るというものです。

インターネットを生み出した技術者たちは、個人の自由な表現が保証されている必要があると考えていました。要するに、国家の統制から離れたところで活動をしたかったのです。国家の眼に監視される可能性のあるネットワークで、個人のプライバシーを保ちながらコミュニケーションを図るには、メッセージに暗号を掛ける必要があります。既存の国家とは異なる、独立した理想世界をネット上に作りたいという願望を持つ人達にとって、そこで使われる通貨が暗号化されるのは当然だったのです。このような試みは、2000年になって起こったバブル崩壊とともに、勢いがなくなって行きました。

2008年にサトシ・ナカモトという名前で発表された「ビットコイン論文」で、仮想通貨への関心が再度高まっていきます。ここには、信用に依存しない電子取引のシステムが提案されていました。既存の取引に使われる既存の通貨は、国家がその信用を担保しています。つまり、国家への信用が必須で、それを無視しては取引が成立しません。しかし、この状態は国家の統制に従属しているとも言えます。そうではなく、暗号化された証明に基づいて取引すればよいというのがナカモト論文の骨子なのです。

暗号資産の「横糸」を知るための本

次に紹介する「横糸」は、縦糸で述べられた時間軸の現在に注目します。横糸的存在を知ることで、歴史的な経緯をたどってきた暗号資産が、どのように展開しているかについての理解が深まるのです。そのような横糸としての2冊目の本は、野口悠紀雄著の『入門ビットコインとブロックチェーン』になります。著者の野口氏は、ファイナンス論や日本経済論の研究者です。また、一大ブームを巻き起こした、整理された知的環境創出のための実践的なガイドブックである『「超」整理法』の著者でもあります。本書では、このような野口氏の経済に対するアカデミックな視点と、難解なことをわかりやすく整理するという実務家の観点がバランスよく表現されているのです。

扱われるテーマは、まず暗号資産の代表的な存在であるビットコインと、暗号資産を実現する基礎技術であるブロックチェーンの概要です。さらに、ブロックチェーン技術を応用することで、将来の社会がどのように変化していくのかまで、横糸が広がります。そこでは、シェアリング・エコノミーやIoT(モノのインターネット)やDAO(分散自立型組織)の社会的可能性がわかりやすく論じられているのです。そして本書の最大のポイントは、それぞれのテーマの理解に役立つような端的な質問に解答するFAQ形式で記述される点です。

たとえば「ブロックチェーンは、社会の構造を変えるのでしょうか?」や「今後、どのような暗号資産が主流になるのでしょうか?」などがあります。このような、多くの人が関心を持つような質問が並んでいて、それに対して難解な用語を使わない簡潔な答えが提示されるのです。また末尾には、さらに学ぶための参考書籍のインデックスや、さまざまな公的経済機関によるレポートのリストまで掲載されています。

縦糸と横糸を知ることで未来を読む

ここで紹介した2冊の入門書は、時間軸を理解するための「縦糸」と、その可能性の広がりを理解するための「横糸」と言えます。暗号資産の取引を効果的なものにするには、それを支えるブロックチェーンなどの技術の理解が不可欠です。そして、その技術がどのように発展してきたのかを知ることと、どのような可能性があるのかを知ることは、次の一手を考えるときに重要な要素になるのです。

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