デジタル通貨

ブロックチェーン技術を活かしたトヨタの挑戦

トヨタが取り組むブロックチェーン技術の可能性

ブロックチェーン技術と言うと、暗号資産を思い浮かべる人も多いでしょう。暗号資産という高度なセキュリティが要求されるシステムに有用なブロックチェーン技術は、ビジネスにおいても多様な可能性を秘めているとさまざまな企業が注目しています。ここでは、トヨタがグループ会社と取り組む「トヨタ・ブロックチェーン・ラボ」とブロックチェーン技術の活用について紹介します。

トヨタのブロックチェーン技術の活用

トヨタが2019年4月に設立した「トヨタ・ブロックチェーン・ラボ」は、ブロックチェーン技術の有用性の検証やグループ各社との連携等の取り組みを進めてきました。2020年3月にはそれまでの1年間行った「トヨタ・ブロックチェーン・ラボ」の活動において、ブロックチェーン技術の有用性を確認できたとして、今後さらにブロックチェーン技術の活用可能性の追求と早期の社会実装に向けた取り組みを加速する方針を明らかにしました。このようにトヨタがグループ各社、さらにはパートナー企業とも連携して取り組みを進めている構想の根幹となるブロックチェーン技術とは、一体どういったものなのでしょうか。

ブロックチェーン技術が可能にすること

仮想通貨などで知られるように、ブロックチェーン技術は「改ざん耐性が高い」こと、そして「システムダウンしにくい」という特性を持っています。高いセキュリティが求められる仮想通貨の取引を行う上で重要な役割を担うブロックチェーン技術は、生活する人や事業者を「安全・安心」に、そして「オープン」に繋ぐことを支える技術でもあります。この「安全・安心」と「オープン」という言葉は、情報においては両立が非常に難しいものです。情報を安全・安心に守るには、隠匿することが最も簡単であり、誰もがオープンに手に取れ、見られる場所に開示しておくことは安全・安心からは最も遠い場所に位置するからです。

しかしIoT(モノのインターネット)の普及によって、モノやサービスが情報で繋がるようになり、よりオープンな情報を提供できる技術基盤が求められるようになりました。それまではクローズドな環境で守っていたデータを安全にオープンにする上で不可欠なのが、ブロックチェーン技術の存在です。ブロックチェーンは暗号化の技術によって、改ざんとコピーを防止するシステムが盛り込まれています。こうしたセキュリティ面での心配がなくなることで、オープンな環境でも使えるようになったのです。トヨタは製造業においていち早くブロックチェーン技術を取り入れることで、安全にデータ共有できる信頼に足る環境を整え、新たな価値を創造することを目指しています。

「トヨタ・ブロックチェーン・ラボ」が検証を進めている4つのテーマ

「車両」に関するサービス

トヨタと言えば車のメーカーとして知られています。そのため、車両に紐付く情報も膨大と言って良いでしょう。特に修理や車検など、車両のライフサイクルに関わるあらゆる情報の蓄積・活用を通じた各種サービスの高度化や、新たなサービスの創出に取り組むことを目指しています。このテーマに関しても実証実験が行われ、特に中古車売買の分野で有用性が確認されています。中古車売買では主に査定で価値が決められていますが、人が行うため、見落としや正しく査定できないこともあるものです。しかし、ブロックチェーン技術によって車両に紐付くあらゆる情報を蓄積し共有、活用することで、従来とは異なる高精度な査定が可能になり、さらにデジタル上で売買契約が完結するなど、利便性の高い取引ができることを確認し、さらなる適用を検討しています。

「サプライチェーン」に関するサービス

トレーサビリティとは追跡可能性とも言い、製品の生産や流通の履歴を管理することですが、部品製造、発送などに関する情報の記録など、ブロックチェーン技術によってより徹底したトレーサビリティが実現します。それまでは各社それぞれでデータを管理していたものが、データを共有し、統一することでそのデータは各社個別のものではなく、モノそれ自体に紐付いたものになります。不具合が生じた場合、モノに紐付いたデータを追うことで原因究明が可能になるでしょう。こうしたトレーサビリティの機能向上もブロックチェーン技術が担う可能性の1つです。また履歴を保存し、データを共有することにより、引き継ぎなどの業務プロセスの大幅な改善も可能になるでしょう。

「価値のデジタル化」に関するサービス

車両をはじめとした価値はデジタル化が可能です。こうした価値のデジタル化により、資金調達手段も多様化しています。ブロックチェーン技術によるデータの共有や、デジタル化による取引の利便性向上が推進されるでしょう。同時にユーザーや投資家との中長期的な関係構築も重視するとしています。

今後の展開

2020年3月には今後の展開として、パートナー企業との連携をより広げるとともに、さらに活動を拡大していく考えを明らかにしました。ブロックチェーン技術は多様な関係者間での安全なデータ共有を可能にするため、ブロックチェーン技術の普及によってさらなる可能性の追求やビジネス実装に向けた取り組みが期待されるでしょう。

トヨタが挑戦する新たな価値の創造

ブロックチェーン技術の活用によって、「安全・安心」に「オープン」に企業と人、モノ、サービスを繋ぐことができる可能性が高まってきました。トヨタが取り組む活動は、まさにトヨタとユーザーだけでなく、トヨタとユーザーを含んだ社会全ての「新たな価値創造」を目指しています。利便性の向上や煩わしい手続きからの解放だけにとどまらず、今後よりブロックチェーン技術を生かしたサービスが提供されるでしょう。

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