周期的なものかもしれませんが、最近またよく「近々ローン破綻が増える」「ペアローン(夫婦二人で借りる)は危ない!」といったものを目にします。それらの多くは、ローン破綻の原因はこれから起きるであろう金利の上昇にあるというのですが、もしかしたら金利はあまり関係ないのかもしれません。
というのも、まだ金利が0%~台である今の段階でもすでに、突然住居を手放して引っ越す人はいるからです。それにもし金利が高かったとしても、給料が途絶えない保証のようなものさえあれば、かなり苦しいながらも何とか最後まで払い続けていくことは可能です。
ですからローンについて言えば、金利なんかよりも怖いのは「クビ」リスクじゃないでしょうか…。
給料×2で堅いはずが、リスク×2に
経済誌などによると昨年マンションを購入した人たちの7割近くが夫婦共働きで、夫婦二人ともマックスでお金を借り入れて購入しているのだとか。
少し下落基調ながら今も売れ行きはそこそこ好調と聞くと、50代半ばも過ぎれば給料が下がるのが当たり前の中、70歳半ばまで働き続けることでようやく支払い終えるような借入プランを、実現性が高いとよく信じられるもんだな…とある意味感心させられたりもします。
二人で働いているということは完全なリスク対策とは言えないものの、「クビ→直ちに生活できない」事態を防ぐ有効策ではあるので、それ自体は良いことなのですが、「給料×2」というのは油断や過信を招くところもあるようです。
多少不安があったとしても、「お二人とも働いているのであれば大丈夫」なんて無責任に勧められるケースもあるのでしょう。よく突然購入を勧めてくる営業マンたちの口ぶりもそんなでしたから、今も売り方は変わらない様子です。
せっかく二人分の稼ぎがあるのだから、一人分は消費に使わずに投資にでも回せば、いつかはどちらか一人が働けなくなったとしても心配がないところまで辿り着けるものなのですが、なぜかどうしてもパーキンソンの法則通りに、多く入ってきてもその分支払いで多く出てしまうので、手残りがほとんど無く、ある日突然クビになると生活の立ち行かなくなります。
なんとも勿体ない話ですね…。
「給料」と聞くとなぜか毎月もらえて当たり前のものと考えてしまいがちなところもあって、それが×2となれば、経済基盤が堅いとか思えてしまうかもしれませんが、実際にはかなり脆かったりします。
コロナ禍が始まった頃と比べれば、人員の大量整理などのニュースは聞かなくなりましたが、今でも少しずつ人減らしは続いているので、突然住居を手放して引っ越す人たちは、そういうケースに当たるのかもしれません。
ちょっと悪いな…と思いつつも偶然見かけた退去の様子を見ていると、コロナ禍が引っ越しシーズンという縛りを無くしてしまったとはいえ、建物の築年数が10年以下とまだ新しい上に、引っ越す時期も人事異動の季節から外れているためやや不自然で、引き払ってから2週間も経つと「売出中」の垂れ幕や看板が掛かるので、「ああ、やっぱりな…」という感じです。こうした光景は以前からよく見られるのですが、何度も目にすると、本当に割と身近にあることで借り手はいつでもこうなり得ることが良く分かります。
さすがに夫婦同時に無職になるようなケースはほとんど無いでしょうが、二人で高額の借り入れをしている場合は、どちらか一人が倒れれば稼ぎが足りず、払い続けることはできなくなるので終わりです。
「終わった」あともそれが完全に終わりではないところがまた悲惨です。
ローンを支払えなくなった住居は、高い価格での購入をさせた人たちと同じ世界の住人が、今度は安く買い叩くので、債務がかなりの大きさで残ってしまいます。その残りの支払いも続けながら、移った先の家賃も合わせて払わなければ生きられないのですから、長く二重に苦しむことになります。
一時でもいい暮らしができたという思い出は確かに残りますが、残念ながら思い出はお金を稼いではくれないので、苦しいときの助けにはなってくれません。給料の代わりになるというのであれば、大きくお金を使う意味もあります。でもそうならないものには多額のお金はつぎ込まないほうが良いのでは…。
いつまでもあると思うな
「いつまでもあると思うな親と金」なんて言いますが、今はこれに「雇用」が新たに加わると思っておいたほうが良さそうな気がします。
何の気なしに贅沢をするための原資は、給料という極めて不安定かつ唯一の収入源だったりするわけですが、これを役に立ってくれないものに全振りしてしまったら、後々困ることになります。