よく30歳時点で○○万円、40歳~50歳で○○万円持っていることが望ましいといったものを目にしますが、その額はあまり気にする必要はなく、それより少ない額しか持っていないとしても心配ありません。
なぜなら一度使ったら消えて無くなるものをいくらため込んでも安心を得ることは出来ないからです。代わりにずっとお金を稼いでくれるもの=繰り返し使えるものを持ってさえいれば、貯蓄がほぼゼロでも問題はありません。
「貯蓄額が大きい」は老後の安心にはつながらない
LIMOの「定年退職後に肝心なのは「資産取り崩し」に失敗しないこと」によると、60歳時点で2,000~3,000万円くらいの貯蓄があることが望ましいとあります。額の根拠は示されていませんが、おそらくは昨年6月に金融庁に提出された報告書にあった「年金収入だけだと老後の生活費は毎月約5万円程度不足する」という説をベースに言っているのかもしれません。
これによると、2,000~3,000万円であれば、社会に出始めてから毎月5,6万円程度貯め続ければ単純な貯金でも到達可能で、これだけあれば自分の寿命の終わりまで順調に取り崩して生き続けるできるようです。でもそれで本当に安心を得られるのでしょうか…。
昨年騒がれた「老後2,000万円」問題は、「老後の毎月の生活費不足分約4~5万円×12か月×余命約30年」と見積もって算出された額ですが、人の寿命は予測しきれません。引退後30年とすれば平均寿命分はカバーされますが、もし予期せぬ長生きしてしまったら、引退前に準備していたお金は尽きてしまいます。
歳を取れば外に出ることも減りお金を使わなくなるのかもしれませんが、他に収入がないのであれば、生き続けるには生活水準を下げなければならなくなるでしょう。
そうした事態を防ぐために、お金のプロの人たちの中には2,000~3,000万円どころかもっとお金を準備しておくべきと提言する人もいますが、60歳代の人たちが今現在持っている平均貯蓄額は二千数百万円で実際にはそこまでが限界と示されているので、それ以上準備しろと言ってもあまり現実的ではありません。
それに現金の塊を幾ら大きくしても、安心を得ることは出来ません。現金は一度使ったら手元から消えて無くなくなるからです。とある意識調査によると、仮にもし1億円以上の貯蓄を持っていたとして将来は安泰と思えるかという質問に対し、約半数の人はそれでも経済的に不安を感じるだろうと答えています。
使えば無くなり減ってしまうのですから、いくら積んでも不安になるのは当たり前です。減るのが怖くなれば使えなくなるので、人生も楽しめなくなります。
ですから、○○万円貯めこもう・それを取り崩して老後をしのごう!の考えは、将来のお金の悩みへの解決策にはなりません。
お金を稼ぎ続けるものを持つ
先程の記事によると、高齢になってから持っているお金を減らさないためには、高齢で投資をするべきではないとあります。お金のプロたちが好きそうなファンド系のものや、値動きで儲ける系のものはたしかにそうです。全くの未経験で高齢になってから初めて市場の動きを読んだりするのは難しいので、やるべきではありません。
ですが、引退前から始めている投資についてはべつに止める必要はありません。
ここでいう投資とは、いわゆる売却益狙いのギャンブルや解約後に現金の塊を得るためにやるファンド系のもののことではありません。事前にある程度決められた額/料率を定期的に得続けるという本来の投資のことです。
実需の堅い事業をやっている銘柄や単なる立地条件ではなく総合的に見てずっと必要としてもらえる物件などを持っていれば、じぶんが何歳になろうがお金を稼ぎ続けることができます。 稼ぎ続けてくれている間は、それを無理に止める必要もありません。
年齢的には年金受給者である父も、同じように家賃や配当をメインの収入源としているため、仮に年金が支給されなかったとしても生活には困りません。堅い収入源があるので、もし貯蓄がゼロだったとしても然して困らない状態です。
見ていると高齢になると億劫になることもあるし、新しい銘柄を選んだり物件を仕入れたりするのは中々難しいようですが、引退前に選んだものが必要な分だけお金を稼ぎ続けてくれるので、無理に新しい案件に手を出す必要もありません。
お金に関する不安を無くしたければ、意識すべきは消えて無くなるものをどれだけ貯められるか・どれだけ取り崩れるかではありません。何かを生んでくれるものをどれだけ持てるかです。