年間に9万人以上が新たに発症する
「乳がん」
今や、日本女性の9人に1人が生涯に一度は乳がんを経験するといわれています。
40歳代後半と60歳代に発症のピークがあり、ほかのがんと比べ、比較的、若い世代での発症が多いことも特徴です。
乳がんそのものの死亡率は高くはありませんが、依然として増加傾向にあり、年間に1万4000人を超える人が亡くなっています。
特に、30歳から64歳に限れば、がんによる死亡者数で最も多いのが乳がんです。
早期に発見され、適切な治療を受けることで高い生存率が見込めるので、大事になるのが検診です。
40歳以降では2年に1度の受診が推奨されています。
残念なことに、国内の受診率は5割に満たないとみられ、海外と比べて低くなっています。
各自治体から対象者にお知らせがありますので、他人事だと思わずに検診に行くべきですね。
*早期では症状がない
主な症状は、乳房のしこりです。
その他、乳房の皮膚のひきつれや乳頭の陥没などがみられることもあります。
加えて、乳頭から血液混じりの分泌物があるときも注意が必要です。ですが、早期であれば自覚症状は乏しく、全身的な症状もほとんどありません。
しこりがあっても痛みを感じないことから、そのままにしてしまうケースも少なくありません。
少しでも乳房に変化を感じたら、医師に相談することが重要です。
診断では、視触診、乳腺用のエックス線検査であるマンモグラフィー検査、乳房超音波検査などを行います。
そうした検査で、細い針を刺して細胞を採取して調べる細胞診や、生検が必要かどうかを判断します。
生検では、良性の腫瘍なのか、がんなのかだけでなく、がんの悪性度やサブタイプと呼ばれるがんの性格を調べます。
加えて乳がんの診断がついた場合、MRI検査を行い、がんの広がりなどを確認します。
サブタイプは、ホルモン受容体が陽性かどうか、細胞増殖に関係する「HER2」や「Ki-67」というタンパクが高いかどうかなどで判断されます。
併せて、病気の進行度によって治療法が決定されます。
*組み合わせで行う「集学的治療」
乳がんの治療は、「集学的治療」といって、手術・放射線治療・薬物療法の三つを組み合わせて行われます。
ほとんどの場合に行われる手術には、乳房全切除術と乳房部分切除術があり、腫瘍の大きさや数、広がりによって決まります。
また、術前の検査で明らかなリンパ節転移がなければ、センチネルリンパ節生検を行い、腋窩リンパ節を切除するかどうかを決めます。
乳房温存療法では、手術後、目に見えないレベルのがん細胞が乳房に残る可能性があります。
そのため、通常は再発を防ぐための放射線治療が行われます。
薬物療法は、抗エストロゲン剤、アロマターゼ阻害剤などをつかう「ホルモン療法」「化学療法」、
トラスツズマブ、ペルツズマブなどを使う「分子標的薬治療」に分けることができます。それぞれ、先に述べたサブタイプによって、
より効果の高い治療が選択されます。
乳がんは、早いうちから転移しやすく、検査をしても分からないレベルの微小な転移が身体のどこかに隠れていることが多いとされています。
したがって、手術だけでなく、薬物療法も組み合わせて行われるのが一般的です。
*違いを感じたらすぐに医者へ
近年、「ブレスト・アウェアネス」という「乳房を意識する生活習慣」が提唱されています。
具体的には
①見て・触って・感じる「乳房チェック」
②乳頭からの分泌物など「早く変化に気づく」
③変化に気づいたら「すぐ医師に相談する」
④40歳になったら「乳がん検診を受ける」
の4項目です。
自分の普段の乳房を最も分かっているのは自分自身です。
しこりかどうかはわからなくてもいつもと違うと感じたら、すぐに医師に相談するとともに、定期検診を行っていきたいものですね。