最近ときどき「一人だと老後が悲惨、二人だと安心」とでも言いたげなものをよく見掛けるのですが、本当にそうなのかを検証してみました。すると結局のところ一人であっても二人であっても、もし給料・年金以外の収入源を何も持っていなければ、生活がキツいのは同じようです…。
独り身だと老後がキツいってホント??
幻冬舎ゴールドオンラインの「独身65歳「年金13万円」毎月貯金を切り崩し…定年後の末路」によると、単身の高齢者の老後は夫婦で居る高齢者世帯よりも経済的に厳しい状況にあるらしいのです。たしかに一人より二人のほうが年金の支給額自体は世帯で見比べれば額は多くはなるものの、だからといって年金だけではやや生活が苦しいのは家族形態に関係なく同じはずなので、単身者だけが苦しいというのも変な話です。
そこで今回は「統計や調査結果を読み解けば暮らしの実態が見えてくる」とあるとおり、本当に単身者だけが苦しくなるのかを調べてみました。
根拠とされている2019年全国家計構造調査・家計収支に関する結果をよく見てみると、なぜ単身者の世帯のほうが老後が苦しいと思われるのかが何となく見えてきました。
高齢で無職の夫婦世帯と単身世帯のそれぞれ毎月の実収入の平均を見比べてみると、夫婦世帯の実収入298,928円のうち給料でも年金でもない収入は全体の28.9%も占めていて、それに対してなぜか単身世帯(男性)の場合は実収入163,492円に対してわずか8.4%と、年金以外の収入が夫婦世帯のそれと比べると割合があまりに小さいからのようです。
でも少し違和感があります。家賃や配当や印税など不労所得というものはべつに結婚などしていなくても得られるものなので、独り身で不労所得があるという人は結構います。
もし「結婚しているから、年金以外の副収入が多い」となるのであれば、老後に向けて2,000万円の貯蓄が無いので生きられるかどうか心配といった不安の声がこんなにも大きくは上がるわけもなく、2,000万円など持っていなくても何も心配はないと今すでに60代以上の人たちも言うはずです。
アルバイトなどの労働や年金以外の収入源を持っている高齢者が世の中にそれほど多いとは思えないので、LIMOの「定年60歳以上「不労所得」がある人は、どのくらいいるのか。」を見てみたところ、こちらにも同じ統計結果もとに実際に年金や給料以外の収入がある60代以上の人は8.4%しかいないとあります。
先程触れた60代以上の単身者で副収入がある人の割合が8.4%とあることから、そのままそれを指して言っているようですが、たしかに多くてもそれくらいしか居ないのではないでしょうか…。他の資料等を見ても、全年齢層を含めると家賃や配当などの上がりがある人の割合は3~5%しかないとあります。
年齢が上がればたしかに資金的に余裕も出てきて何らかの資産運用をしている可能性は高くなりますが、それにしても60代になると自動的に一気に膨れ上がるとは思えないので、おそらくこの夫婦世帯の毎月約86,391円の不労所得などの部分(*毎月の総所得 298,928円× 28.9%⇒年金など社会保障給付以外の収入)というのは、ごく一部のたくさん副収入がある人が平均を大きく押し上げた数字の可能性があります。
実情に近い中央値はもっと低いでしょう。完璧な調査というのは無いはずなので、もしかしたら調査時のサンプルに少し偏りがあったのかもしれませんね。というのも、もし本当に高齢夫婦の不労所得が平均で毎月8万円以上もあるならば、そもそも老後の取り崩し用の資金など準備する必要が無くなるので、老後2,000万円問題報告書もわざわざまとめ上げる必要もなかったということになります。単身だからなくもし夫婦で居てもお金が足りないとされるから書かれたものです。
もし毎月平均約8万円の不労所得が本当であれば、唯一考えられるのは、現役時代に掛けていた個人年金や保険からの戻りなどでしょうか…。でもそれなら独り身の人だって同じように備えているはずですから、中身が何なのかが分かりません…。
一人であるか二人であるかの問題ではなく
でも何にしても、これまでも年齢高めの人たちと会話をする中で、自宅・貯金・雇われ仕事以外には特に他に何も持っていないという人は多かったので、そうなると、年金収入だけではお金が少し足りず老後がやや苦しいというのは、夫婦で居ても独身でも同じです。足りなければ少し働くなどして何とかしなければならないのも同じ。
老後の生活の厳しさを決めるのは、一人であるか二人であるかではありません。 生身の自分と貯金以外に、お金を稼いでくれるものを持っているかいないかです。