「投資をする」と聞くと、大きな売却益を得るためにやることと思っている人が多いように感じます。たぶんバブル期に、その頃はまだデジタルなものはほとんど何もなかったものの、土地やら株やらゴルフ場の会員権や高価な品物など他のあらゆるものの転売で大きく儲けた/大きく損をして身を滅ぼしたという話を色々聞いて、そのイメージがあまりに強すぎるからかもしれません。
でもそれは本来の投資= 何か新しい価値が生まれた中から分け前をもらうこと とは少しちがうし、ほとんどの場合は上がるか下がるかは個人レベルではコントロールできるようなものではなく、ギャンブル的な性格が強いので、金もうけの手段としては不確実なところがあります。
ですから、じっくり堅く収入自体と資産の合計を増やしていきたいのであれば、そうした「投機」をするよりも、なるべくもっと事前に決められたもしくは発表されている額/料率/単価が入る見込みが立ちやすいものに多く資金を投じて増やしていくほうが良いでしょう。
安く買って高く売る、はお金もうけの基本ながら
いつから投資が投機と混同されるようになってしまったのかは正確には分かりませんが、冒頭でも触れたとおり、本格的に投資をしたことが無い人たちと話すと、値動きでしかお金を儲けることが出来ない「投機」のことを「投資」と勘違いしてしまっていることが多いようです。
売買で儲けるのは、お金を稼ぐ手段としてはもっとも手っ取り早くてあまり労力が掛からなそうな手段に見えるので、これで大きく儲けられたらどんなに楽で幸せか…という思いが先行してしまうからというのもあるのでしょう。
たしかになるべく安く買って高く売る、は商売の基本とされていますし、投資においても同じように、できれば少しでも仕入れ値を小さく抑えるほうが、投資した資金を早く回収できて有利にはなります。
でも投資の場合は、それをあまり意識し過ぎなくても良いという大きな強みもあります。どういうことかというと、「投機」においてはお金を稼ぐ方法としては、売り買いする際の価格差で儲けるしかありません。ですが「投資」の場合は、来るか来ないかも分からないような売り買いのベストなタイミングを待たずとも、定期的な上がりが入るので、多少高く買って失敗してしまっても、その上りによって高く買ってしまった損を穴埋めすることが出来ます。
もちろん、だからといっていつでもその時の適正な相場/価格を意識しなくてもいいということではありません。少しでも安く仕入れるようにはしないと、もうけの最終的な合計は少なくなってしまいます。でも定期的な上がりという安全装置があるゆえに、高くつかんでしまっても、痛いは痛いものの、何とか致命傷にはならずに済みます。投機の場合は、最初に高くつかんでしまったら(信用の場合は逆に下がってくれなかったら)もうおしまいです。
爆発力は無くても、堅く頼りになる定期的な上がり
でも投資家と呼ばれる人たちの中には、この売買でしかお金を儲けることが出来ないものへの「投資」を、有望な投資先として推す人たちもいます。
一応、目に見えるものが確実に存在・流通していて、換金も可能だからということのようです。
例えばダイヤモンドオンラインの「投資初心者ほど、無自覚に過大なリスクを負っている」などによると、 投資資産のうち2~3割くらいをコモディティ(貴金属や原油などの商品)に向けるべきとあります。その中でも特にゴールドが有望とみているそうなのですが、一応目に見えるものが確実に存在・流通していて、換金も可能だからということなのでしょうか。
確かに少し前から金は、工業用途で需要が減って価格が落ちてしまった本来はより希少価値があるはずのプラチナよりも高価になり年々上がり続けてはいます。そのため投資資金の一部をこれにも振り分けておいたほうがいいらしいのですが、貴金属への「投資」には先程も触れたとおり一つ問題があります。
ゴールドは確かに市場価値があり取引が可能な物体ではあるものの、それ自体が何かを生むということは無いのです。他の貴金属のように何かの理由で価格が落ちてしまったら、その損を取り戻す手立てがありません。いっそのことその価格帯でさらに多く買って、価格が戻ったところでの大きなもうけを目指すという方法もありますが、市場価格の動きはどうにもなるようなものではなく、予測もしにくいのでどうしてもギャンブルになってしまいます。
ゴールドではなく銀の場合は、10年に一度くらいの周期(?)で価格が大きく変動してもうけのチャンスが来たりして、その時に上手く高値で売り抜けて大きくもうける人もいますが、そのチャンスがいつ来るかは毎回誰にも分かりません。それに、来るまではその商品に投資した資金は何も働いていない状態のままとなります。
その間に代わりに別の利回りの高いものに投資をしていれば、ギャンブルをせずとももっと安全にお金を稼ぐことが出来てい居たかもしれません。上がってきた定期的な上りを使わずに、そのまま再投資に回すことで、投資をすることで増えた収入をさらに増やしていくことが出来ます。
売買を繰り返すという方法でも、元手をだんだんと大きくして同じようなことをすることも可能ではありますが、それ一本でいくのは不確実性があまりに大きくて、持っている間に他のもっと良い方法で稼ぐ機会を逃してしまうこともあるので効率的ではなさそうです。
市場の機微を読むのが得意で滅多に外すことは無いという人であれば、投機的な方法でお金を稼ぐのも一つの手です。投機を100%否定するつもりはありません。読む力があるのであれば、それを使わないのは勿体なさすぎます。でも、手っ取り早く手間が掛からなそうに見える投機も実はトータルで見ると気苦労が多く、素人がやればそれこそ無自覚で過大なリスクを背負ってしまいます。
読めないのでそれをやる自信が無いという人の場合(ほとんどの人が多分そうだとは思うのですが)は、頼りになるのは投機性資産よりも定期的な上がりが入る本来の「投資」のほうです。