新たな資産運用方法として、定着しつつあるのが暗号資産です。暗号資産にはデータ処理が追いつかなくなるスケーラビリティ問題があります。それをクリアしたのがシンガポール発の暗号資産Zilliqa(ジリカ)です。今回はそんなZilliqa(ジリカ)について、誕生までの経緯や掲げている理念、暗号資産としての展開、今後の展望などを徹底的に解説していきます。
Zilliqa(ジリカ)の誕生までの経緯と理念
*誕生までの経緯
Zilliqaは、暗号資産としては後発組の2017年3月に発表されました。開発したのはシンガポール国立大学で博士号を取得しているXinshu Dong氏と同大学のコンピュータサイエンス学科の助教授であるPrateek Saxena氏を中心としたシンガポールのチームです。Zilliqaが開発された背景には、暗号資産業界で多発しているスケーラビリティ問題がありました。スケーラビリティ問題とは、暗号資産の取引量が増加をしたときに、一度に承認できるデータ量が定まっているため、全ての取引が完了できずに遅延してしまう問題です。端的に説明すると、情報処理が追いつかないということです。Zilliqaは、このスケーラビリティ問題に対応することを一番の目標として開発が始まりました。
*Zilliqa(ジリカ)の目指すもの
Zilliqaの理念は基本的に既存のブロックチェーンと変わりません。暗号資産を分散型で非中央集権的、グローバルでニュートラルな新たなプラットフォームとして準備するという理念です。スケーラビリティ問題を解決できるほどのデータ処理能力を有しているZilliqaもそうした理念に沿って開発されています。ただし、Zilliqaの場合はその迅速なデータ処理能力を活用し、新たな決済方法として定着を図るということも理念の一つになっています。例えばクレジットカードや電子マネー決済のようにキャッシュレスに対応するということです。実際にZilliqaのデータ処理速度はクレジットカードと同等のクラスであり、更に進化してデータ処理件数を増加させれば新たな決済方法となりうることも可能です。
Zilliqa(ジリカ)の特徴と技術、展開に今後の展望とは
*Zilliqa(ジリカ)の特徴と技術
前述の通りにZilliqaの特徴は、やはりそのデータ処理能力の高さです。既存の人気暗号資産が1秒に約5件のデータ処理能力であるのに対して、Zilliqaは1秒間に約2800件ものデータ処理を完了できるだけの能力を有しています。こうした特徴には、Sharding(シャーディング)と呼ばれる技術が用いられています。既存の暗号資産では、ネットワーク上の全てのノードを介してデータ処理をおこなっていましたが、Sharding技術ではこれをShard(シャード)と呼ばれるグループごとに分けて並行処理をすることでデータ処理を高速化します。こうしてグループに分割するとセキュリティ面の問題が発生しやすくなりますが、Zilliqaでは無作為に分けることでセキュリティ面の問題を解決しています。
暗号資産では、スマートコントラクトと呼ばれるコンピュータプロトコルを用いた商取引が一般的になっています。これは名前の通りにスマートな(洗練された)コントラクト(契約)という意味であり、事前にプログラムされている条件を満たすことで自動的に契約が完了するという仕組みです。暗号資産では、信頼性の担保や取引履歴の透明化が重要視されるので、コストがあまり発生せずに価値を担保することができるスマートコントラクトの導入は基本です。しかしながら、暗号資産で用いるスマートコントラクトの開発言語はとても難解であり、利用できる技術者が限られている上に、バグや改竄といった事態に対応しにくくなっています。Zilliqaはそうした問題に対応するために、Scilla(シラ)と呼ばれる独自の言語を開発して、新しいスマートコントラクトを設計しました。これにより、言語としてのハードルが下がり検証などが実施しやすくなりました。
*Zilliqa(ジリカ)の展開と今後の展望
2017年のプロジェクト発足以来、Zilliqaはアジア地域を中心にグローバルな展開をしています。2018年には中国最大の取引所であるBinance(バイナンス)とアメリカ最大級の取引所であるCoinbaseに上場し、2019年にはメインネットを開設しました。国内外のベンチャー企業への出資も加速化しており、日本のベンチャー企業も出資を受けています。2020年以降は更に展開を進めていくと公式に発表しており、当分の間は勢いが続くとされています。今後の展望としては、いかにデータ処理能力を向上させて決済方法として定着することができるかという点がポイントになってきます。プロジェクト発足当時はSharding技術を応用した暗号資産は少なく、暗号資産バブルのようなモノも発生していて、Zilliqaのデータ処理能力は大きなウリとなっていました。しかしながら、現在は他の暗号資産でもSharding技術の応用が進みつつあります。そのため、Zilliqaはさらにその先の決済方法としての定着化を狙う必要があるということです。
Zilliqaはデータ処理能力に優れています
今回は、暗号資産であるZilliqa(ジリカ)について、その誕生までの経緯と理念、特徴と技術、展開と今後の展望を詳しく解説してきました。データ処理能力に優れたZilliqaは今後、決済方法としても定着できるほどのポテンシャルを持ち合わせています。既存の暗号資産の枠組みを超えるかもしれない可能性がある通貨なので、投資をしてみるというのも一つの手です。