『鬼滅の刃』というタイトルのマンガを知っていますか?
『週刊少年ジャンプ』で連載する大正時代を舞台にしたアクションアドベンチャーで、人を喰う「鬼」と、それに対する鬼殺隊の戦いを描く。
主人公の少年・竈門炭治郎(かまど・たんじろう)は鬼に変わった妹・禰豆子(ねずこ)を人間に戻す方法を得るため、鬼と戦い続けるというストーリーだ。
作者の吾峠呼世晴(ごとうげ・こよはる)は、2014年にマンガ家デビュー。2016年に開始した『鬼滅の刃』が連載デビュー作という若手である。
『鬼滅の刃』は2020年5月まで連載し、連載終了後もその人気は止まるところを知りません。さまざまなグッズが発売され、未だに異様とも言える盛り上がりを見せています。
『ONE PIECE』を抜く
2019年のオリコン年間コミックランキングによれば、『鬼滅の刃』の発行部数は1205.8万部、2位『ONE PIECE』の1080万部を上回り第1位に輝く。
売り上げは2019年4月のテレビアニメ放送開始以降、急激に伸びた。
テレビ放送前の3月の段階で累計発行部数は450万部。テレビアニメ終了間際の9月には1200万部、2020年2月には4000万部を突破した。
この数字さえ、実際の人気からは控えめと言える。昨年秋から年明けにかけ、全国書店で『鬼滅の刃』の品不足が深刻化、棚が空になる現象も起きていたからだ。
商品が充分であればもっと売れていただろう。
『鬼滅の刃』のアニメ化
単行本の売上げを大きく伸ばす要因にアニメ化がありました。
『鬼滅の刃』の放送前からの累計発行部数の伸びは、一年足らずで10倍近くと群を抜き
週刊少年ジャンプで少年を主人公に据えた『鬼滅の刃』は、マンガの王道のように見える。
しかし連載開始当初から成功していたかといえば必ずしもそうではなく
ジャンプの並み居るマンガのなかでは、むしろ人気は控えめなほうだった。
絵の描き込みが緻密で、メインキャラクターも容赦なく死んでいくストーリーは、必ずしも万人受けでなかったとの指摘もある。残酷描写もあることを考えれば、むしろファンを選ぶ作品だった。
作品へのハードルを下げたのが、テレビアニメだ。
劇内でキャラクターたちは、動きに躍動感がでるようマンガ版よりもシンプルに描かれており人気に拍車をかけた。
全年齢型コンテンツ
ヒットの拡大は、「厚いファン層」も理由にある。読者層のボリュームのひとつが、小学生との指摘は多い。
紙単行本の大ヒットは、電子コミックの決済手段を持たない子どもたちが支えているという話もある。
ヤングアダルト層(13〜19歳)の女性の間でも支持が高い。気弱なのにいざとなると強さを発揮する炭治郎の同期・我妻善逸(あがつま・ぜんいつ)や、クールだけど空気を読めない兄弟子・冨岡義勇(とみおか・ぎゆう)など、多彩なキャラクターが人気だ。
さらにヤングアダルト層の男性やそれ以上の世代の男女など幅広い層から支持されている。
夢中になるストーリー
物語としての魅力もヒットに大きく貢献している。
それは誰もが愛し、はまりやすい設定だ。
「鬼」と「鬼殺隊」の敵味方の対立がシンプルでのめり込みやすい。
また、鬼殺隊は複数の隊に分かれたチーム制、さらにそれぞれの隊は「柱」と呼ばれるリーダーなどがいて成り立っている。
このなかで友情、ライバル、先輩後輩といった構図が生まれ、それぞれの立ち位置から多彩なキャラクター設定が可能になる。
こうしたシステムは、往年の大ヒット作『聖闘士星矢』、ジャンルが異なるが宝塚歌劇団にも共通する。
宝塚歌劇団では各役者への人気が長い歴史を支えてきており、昔から続く物語の魅力を高めるためのシステムを踏襲したことも、『鬼滅の刃』の面白さの秘密のひとつでないだろうか。
また、ベネッセコーポレーションが全国の小学生会員7661人に実施した意識調査では『鬼滅の刃』のキャラクター7人が「憧れの人物」
にトップ10入りしており、主人公の炭治郎に関してはお母さん(アニメではない)を抜き1位にランクインしていました。
今後どのように進むか想像もつかない『鬼滅の刃』。
楽しみで仕方ありませんね。