老後資金としてはとにかく追加で毎月数万円分もあれば十分。これが結論と言えます。しかも現金で「2,000万円」も用意する必要はありません。2,000万円では足りず5,000万円近く必要と見る人もいるそうなのですが、それだけの金額を準備できていなくても問題ありません。実際そんなに掛かっていない(掛けられないとも言えますが…)ことが調査結果等で示されているからです。
働けば何とかなる?
昨年6月に老後資金として2,000万円必要と騒がれたことから、金額を聞いて心配になった人は多いかと思いますが、 LIMOの「もうすぐ定年、その貯蓄額で安心?定年後を支える資金「4つの柱」とは」によると、老後資金として必要とされる「2,000万円」のうちそのほとんどは、貯蓄と退職金で準備可能で、足りない部分は無理に投資などせずとも働けば何とかなるとあります。
どういうことなのか内訳を詳しく見てみますと、まず貯蓄については60代の人の世帯の平均貯蓄は約1,460万円あり、退職金についても大卒で20年以上勤めている場合は平均すると定年時に約1,980万円支給されるからのようですから、 貯蓄の中にはもしかすると既にこの退職金が含まれているのかもしれませんが、 これらの金額だけを見れば一応準備は完了しているのでたしかにそれほど心配は無さそうです。
実際に高齢者の人たちの生活費が今現在どれくらい掛かっているのかを調べたところ、総務省統計局のホームページなどによると65歳以上の夫婦二人で月平均で23~24万円前後で、これに対していわゆる平均的な年金収入も世帯当たり22万円前後と出ているため、ほとんどは年金でカバーできているようです。
毎月の不足額は1万円強くらいでしかないので、これに×12か月×余命30年くらいと見積ると、合計しても老後資金としてひつようなのは500万円くらいにしかならないようです。
これくらいの額ならば、たしかに先程の記事中にある通り、「不要な投資などせずに少し働けば十分に何とかなる」となりそうです。
ただ、高齢になってから働き続けるというのは実際にはかなり体にはキツいそうです。しかもさらに歳を取ってからの対策として「65歳からの再雇用で少しでも資金を増やす手立てを…」と言っても、実際にはそのまま雇い続けてくれるところは11%くらいしか無いらしく、働けるとしてもアルバイト的なものがほとんどのようです。
70代を過ぎてもアルバイトで何とか食つなぐというのはかなりキツいようにも思えるので、毎月数万円程度で済むのであれば、少額の投資で家賃や配当などを得てカバーするほうがもっと無理がないような気がします。
いずれにしても現金で2,000万円も無くてよいわけです。
老後に毎月36万円も必要なのか?
ところが最近、「ゆとりある老後生活を送るには毎月36万円必要で…」などという説が出回り始めており、老後不安をさらに煽っているようなのですが、調べてみるとどうやらその金額の根拠も薄いのであまり気にしなくても良いようです。
よく金融機関などからはこの生命保険文化センターが出した「毎月36万円」に基づいて「老後資金としては5,000万円近くも必要」(=追加で毎月14万円×12か月×余命30年として)とか載せていたりしますが、出どころのホームページをよく見ると、生活費として必要となる金額は最低でも毎月22万円でしかないと認めています。高額な商品の売り込みを強化したい気持ちは分かるのですが…。
もしレジャーや趣味などでもっと贅沢ができるのであれば「いくら必要と考えますか?」という問いに対して、追加で毎月14万円必要ということですから、毎月36万円の収入がないと生きられないなんてことはありません。本当に贅沢をしたかったら、毎月追加で14万円などでは済みません。
年金機構のパンフレット (「知っておきたい年金の話」2020年4月1日付) にも、実際に「5割以上の人が年金だけで暮らしています」とあり、毎月数万円は他に労働による給料や配当や家賃などの収入とあることから、それだけで十分足りるようです。
しかも不動産や株式からの上がりも含むとあることから、労働だけではキツいというのも今の一部の高齢者の方々も分かっていて、投資もある程度は必要と証明しているようですね。それに投資で毎月数万円分の上がりを得るには、2,000万円も必要ありません。もっと少額でも出来ます。
現金は一度使ったら手元から消えて無くなります。消えて無くなるものをいくら積み上げても安心を得ることは出来ないので、何度も使えるものを積み上げていきましょう。