「老後の資金が心配…」という声はよく聞きますが、年金生活に備えていくら必要なのかというと、昨年騒がれた金融庁に提出された報告書によると2,000万円とあり、また2015年ごろに発表された別の論文によると、貯えとしては500万円もあれば十分とされています。
不安をあおれば商売になると思ってか、そうした年金不安に乗っかって、ゆとりある老後生活を送るには、毎月35~36万円も必要!と吹聴する人たちもいるようですが、普通に生きていく分にはそこまで必要ないので大丈夫です。しかもそんなにガマンしながらの生活ではなさそうです。
統計を見るかぎりでは、毎月15万円も不足にはならない
「とにかく現金がたくさん必要!」と不安をあおって、少しでも多くファンドを買わせたいのでしょう。以前ここでもパンフレットをお見せしたことがありますが、金融機関や保険屋さんなど、よく「ゆとりある老後生活を送るには毎月35~36万円も必要となり…」と書き綴ったものをDMや店頭などで配布して回っていますが、あたかも毎月これだけ使える状態でなければ老後を生きられないかのような印象を与えてしまう内容だったりします。
先日見つけたこちらの幻冬舎Gold Onlineの「40万円だったが…「少なすぎる年金額」にサラリーマン絶句」なども似たような論調で、毎月の生活費の不足分を補うには投資でカバーするのが良いとあり、投資する必要があること自体には同感ですが、「毎月の不足額」が約15~16万円というのは大きく見積もり過ぎです。
厚労省の年金生活に関する調査や総務省統計局が公表している資料によると、今現在すでに引退生活をしている人たちの毎月の生活費は、統計によって多少のバラつきはあるものの、夫婦二人でも大体22~25万円と出ています。それに対して、夫婦の年金収入額も平均すると20~22万円くらいとあるので、マイナス部分は毎月数万円程度にしかなりません。
「老後2,000万円問題」の発端となった昨年6月に金融庁に提出された報告書にでさえ、毎月の生活費の不足分は4~5万円でしかないとあります。年金以外に毎月15万円も必要とは書かれていません。
また、それよりも5年も前に発表された論文によると、生活実態をもっとよく調べてみると、実は毎月の生活費不足額は1万円強くらいでしかなく、仮にもし余命30年分を現金で一括で用意しなければならないとしても、500万円もあれば十分だ(=毎月1万円強×約30年)とされています。
そうすると、この「毎月15~16万円足らない!」はいったいどこから湧いて出てきたのでしょうね…。とても不思議ですし、ゆるめて贅沢しようと思ったら、毎月15万円では足らないはずなのです。
現金で用意する必要もないし、年金以外に毎月4~5万円以上稼げれば十分
理想の生活スタイルがどうであれ、少なくとも今現在は既に引退している夫婦二人の生活費は二十数万円前後と統計に出ており、実際にその額で生活しているわけですから、それで生活できないことはないはずです。
先程触れた記事は将来必要となる老後資金総額自体に間違いはあるものの、「投資でカバーすべき」という方法のはたしかに有用ではあり、たとえばもし仮に生活費の不足額が金融庁に提出された報告書にあるとおりに毎月4~5万円だったとしても、これは中古の戸建てなどの不動産を1~2戸持つか高配当が付く銘柄の株式を総額で1,000万円分くらい買って持てば、上がってくる家賃/配当で十分にカバーできます。
この方法であれば2,000万円も必要ありません。現金の塊を持っておく必要もあまりありません。投資としても、何とか無理なくやれる額でもあります。
何か衝撃的に見えるものを見て心配になり過ぎよりも、実際にはいくら掛かっているのかを良く調べ、どうやれば効率的にカバー出来そうかを知れば、何かと暗いイメージを持たれがちな老後生活もそんなに怖くはありません。