老後が心配だからお金を貯めないといけない、でも毎月の支出が大きすぎて貯められない…といった悩み相談を、よく目にします。FPもそれに対して、「○○と○○を削れば、たぶん引退までにこれだけ貯められます」といった回答をしますが、実はそれだけでは救われません。
現金は使ったら消えて無くなるので、消えて無くなるものをいくら積み上げても安心を得ることは出来ません。
安心を得たければ、単純にお金を貯めることを頑張るのではなく、お金に働いてもらって、定期的にお金を稼ぎ続けられる資産を持つ必要があります。
削って、貯めて、それを投資に使う
夫婦共働きで夫婦別会計としている場合、なかなかお金が貯められないと聞きますが、Money Plusの「30代なのに貯金120万の夫婦「なぜたまらない?」別会計の落とし穴」」などからも、一家に働き手が二人いることである意味安心しきってしまい出費の管理がゆるくなりお金が貯められず悩んでいる夫婦の実態が見えてきます。
収入は手取りで、夫が29万円・妻が16万円。出費の総額は毎月44万円とほぼ使い切りの状態です。毎月の貯金は1万円程度しかできないことから、いまのところ一家の貯金としては120万円しか手元にないようです。
何とかこれを増やして老後に備えたいようなのですが、冒頭でも触れた通り、現金を積み上げるだけでは、安心を手に入れることは不可能です。
貯めておき、それを将来取り崩すという戦略である以上、実際そうし始めて現金の塊がだんだんと減って小さくなると「あと何年持つだろうか・・」という心配からは逃れることは出来ません。
そうした心配や恐怖から解放されるためには、使っても消えて無くなったりせずにずっとお金を稼ぎ続けてくれるものを持つ必要がありますが、そのためにはまずは出費の中から無駄を削り、投資をするための種銭を作らなければなりません。
先日、同じような収入レベルの夫婦でも毎月25~26万円貯めている例について触れましたが、そこまで切り詰めて生活することはキツすぎてできないとしても、大きく削れる部分は絶対にあるはずなので、この世帯の内訳も見てみると、
住宅ローンの支払が9.5万円とこれはよく聞く額なのでたぶん普通ながら、1歳の子供が一人の計3人家族なのに食費は9.2万円と多めのようで、生命保険に3.2万円、交際費も4.2万円、「その他」が4万円とあるので、このあたりを大きく削って投資用の種銭つくりに回すことができれば、かなりのスピードで投資をすることによって収入を増やしていくことができそうです。
生命保険は何かあった時に一回しか得ない現金の塊を得るためのものなので、まずこれを全て削り、おそらく何のお金も生んでいないであろう「その他」も全て削ります。ほとんど意味のない飲み会参加等をしないことで、これも半分に減らせるでしょう。将来に備えるためには娯楽も少しは我慢が必要なので、合計で毎月10万円くらいは投資用の種銭つくりに回せるはずです。
2人ともまだそれぞれ34歳・31歳と医療費が掛かる歳ではないため、現金に近いものはまだそんなに必要ありません。作った種銭はまずは不動産への投資に全力で回します。株式などの現金に近い物への投資は「定期的な収入を増やす」力は少し弱いので、後に回します。
まずは1年8か月かけて、200万円貯めます。それを使い中古の戸建てなどを購入します。なるべく状態のいいものを買い、それに最低限のリフォームをして賃貸市場に出します。地元も不動産屋さんの協力を得て(広告料を支払い)入居者が付くと、200万円クラスの戸建てでも管理費を差し引いた後の手取りで毎月3万円以上の家賃が入るようになります。
この後もさらに不動産を増やしていくわけですが、最初の1件を持つことで、スピードは加速します。毎月の貯金10万円+家賃の上がり3万円で、次は15か月くらいで同じ価格帯の2つめの戸建てを買うことができます。そしてこれも同じように賃貸市場に出して入居者が付くことで、また手取りで毎月3万円以上収入を増やせます。
そのあともさらに収入を増やすべく、毎月の貯金10万円を続けて2つの不動産からの家賃を全力で貯め続けます。また同じ価格帯の物件を買う場合、今度は時間は1年くらいしか掛かりません。そしてこの3件目の物件も、同じように賃貸に出して入居者を付けてもらいます。そうすることで、また家賃収入を手取りで毎月3万円以上増やせます。
ここまで約5年~5年半くらいというところでしょうか。二人ともまだ若いので、しばらくはまだ「収入自体を増やす」ことを重視していても問題ありません。まだ年齢的に現金はそれほど必要ありません。
再び不動産への投資を続けると、今度は毎月の貯金10万円+不動産3件からの上がりで、わずか10か月程度で同じような物件が買えます。そしてこれもまた同じように賃貸市場に出して、これまでと同じように広告費を使えば、2か月くらいで入居者を付けてもらえるでしょう。そうすると、また家賃収入を3万円以上増やせます。
いつもであれば不動産を増やすのは一旦ここまでにしていますが、二人はまだこの頃40・38くらいですから、現金が必要になるまでにはまだ時間はあります。少なくともあと1~2件は増やしておき、妻の元々の収入分くらいは家賃で稼げるようにしておくと安心です。42・40になる頃には、家賃で毎月18万円くらい稼げるようになります。
この頃には働く生身の自分たち以外に他にもう一つの大きな収入源もあるので、自身の病気や親の介護や子供の教育費に備えるのはここからでも全然遅くはありません。
ということで、ここからようやく少し流動性を重視ということで、年利換算で約4~5%の高配当が付く銘柄の株式への投資に切り替えることにします。
もしこの頃にも二人とも給料が全く上がっていなかったとしても全然問題はありません。毎月10万円の貯蓄+不動産の上がり毎月18万円以上があるので、これをそれまでと同じように全力で投資に向けることで、1年数か月ごとに、毎月1万円の配当収入を得て総収入をさらに増やし続けることができます。そして当然これにも同じように複利の効果が働くので、実際にはもう少し早く積み上がります。
投資はクビ・病気・老後対策になる
夫のほうが50歳になる頃には、副収入の総額は月額で、元々の手取り月収と同じくらいになるんじゃないでしょうか。不動産以外に株式などの現金に近いものの積み上がりも「老後2,000万円」以上にあり、定年を待たずして準備は整っていることになります。
何よりも心強いのは、何度上がりを使っても、消えて無くなるということはないという点です。
さらに、例えば職を失ってしまったり体を壊して動けなくなってしまった場合、あるいは不慮の事故に遭ったりして自分がもう生きていなかったとしても、それでも家族を養える・守り続けられることができます。
単なる貯蓄や「保険を掛けておく」ではこういったことは出来ません。貯蓄よりも、投資で収入源を作り増やすことがいかに大事か、参考になれば幸いです。