年金不安を感じている人は多いと思います。その心配を解消するために「もっと働け」というアドバイスをする人たちは多くいますが、じつはその方法はあまり効率が良くありません。
「働く」ことで築いた基盤は、勤め先の都合次第でいつでも簡単に吹き飛びます。将来・老後に備えるというのであれば、投資で副収入を増やすほうが経済基盤がより強固になり安心です。
もっと働けば、年金収入が増える?
東洋経済の「年金を2000万円増やす「60歳からの合わせ技」」によると、年金の受給額を少しでも増やすには、収入を増やすこと、なるべく長く働くこと、受給開始を遅らせること、が有効だそうです。
「働く」だけを軸に考える場合は、たしかにするしかないように見えます。ですがわりと非効率でキツい道です。
ではまずは「収入を増やすことで受給額を増やす」やり方の有効性を見ていきますと、
例えば現役時代を通しての平均年収が350万円の人の将来の年金受給額は、国民年金と厚生年金を合わせると月額約12.5万円くらいだそうで、それに対して現役でいた間の平均年収750万円だった人の年金受給額は月額19万円弱になるので、働いていた時の年収が増えれば年金受給額が増えるのは事実のようです。
ですが、これはかなり非効率です。一般的には、年収350万円の人よりも年収750万円の人のほうが仕事はさらにキツく、背負わされる責任も重く、しかも賃金が高い分だけクビのリスクも高いので、そこまでやらされて徴収される保険料も多いからには、受給額も倍以上もらえないと気持ち的には納得できないですよね?
でもそうはならないのです。
年金の制度は、どちらかというと稼ぎが少ない人向けに手厚く支給されるように設計されていて、働き手として稼ぎの多い人には負担が大きくなっても平均程度しか分配されないようになっています。
そのため、先程の年収350万円と年収750万円のふたりを比べた例からも見えるとおり、年収や保険料支払いが倍になったとしても、将来もらえる額は毎月たった6万円くらいしか増えません。
続いて、「老後も働けば、資産の取り崩しを抑えられる」の効果についてですが、これも間違いではないものの、実際に生で聞いた高齢の働き手の人たちの愚痴の内容からすると、歳を取ってから働くのはかなりハードなようです。
年金受給開始年齢が65歳からになり、今の60代の人は元気なことから、60~65でも働き続けるのがわりと普通にはなってきましたが、それ以降も働き続けるのは結構辛いようです。しかも、そもそも65歳以上でも雇い続けてくれる企業自体が1割強と少なく、雇ってもらえなければどこかでバイトでもするしかないのですが、選べる職種も少なくて、収入の額はあまり期待できません。
3つ目の受給開始年齢を遅らせる、についてですが、これは受給額を年額で4割以上も増やせることからかなり有効ではありますが、人の寿命は読めないので、先日こちらの「フリーライダーどころか重要な支え手だった?」でも触れましたが、一生懸命まじめに払い続けて、しかも受給を遅らせたはいいけれど、寿命が足りなかった…なんてことになる可能性だってあります。
投資で収入を増やすメリット
ここまで「もっと働いて老後に備える」方法について見えきましたが、今度は「投資をして将来/老後に備える」方法の有効性についてみていきましょう。
これまで何度かここでも触れてきた通り、例えば完全に無一文の状態から新たに毎月3万円を投資用資金として貯金して資産を増やしていった場合、約15年くらいで毎月十数万円の副収入を得られて、株式であれば約1.5年ごとに毎月1万円もしくは不動産であれば1年ごとに毎月手取りで3万円以上増やしていけるところまでたどり着けます。
ここからさらに5~7年程度使って株式ではなく先に不動産を増やし続ければ、副収入の上がりは倍以上に増やせます。投資を始めたスタート時の年収が仮に350万円くらいだとして、その後も全く年収が上がらないようなブラックなところだったとしても、投資の上がりを合わせれば、トータルでの稼ぎは年収750万円くらいになっているかもしれません。
話を簡単にするために、その時点でちょうど65歳となり引退を決めたとします。
副収入が大きかったとしても、働き手としての稼ぎは相変わらず年収350万円のままであれば、厚生年金等の支給額はあまり増えないはずです。毎月13万円弱しか入らないとします。
ですが、それでも全然問題ありません。元労働者として得られる年金の受給額が毎月13万円弱だったとしても、副収入の毎月33万円近くは、資産を持ち続けて適切なメンテし続けるかぎりは、老後に働かなくてもずっと入り続けます。
これだけあれば、仮に年金が支給されなくなっても十分に生きていけるはずです。
定年まで働き手一本のままできた場合は、そうはいきません。現役時の平均年収が750万円だったとしても、もらえる年金が毎月19万円弱と、それ一本しかありません。
現役時に安月給だったとしても毎月13万円の年金+毎月33万円の副収入があれば、老後の収入合計額は毎月46万円と大きく、副収入を育てていた人のほうが圧倒的に有利で豊かです。
投資で将来に備えるメリットは、それだけではありません。
「突然のクビ切り」への非常に強力な防衛策としても機能します。
たとえ働いて年収1,000万円を得ていたとしても、40歳以上にもなると、ある日突然クビでお前要らないといわれることがあります。そうなると一気に無収入になり生活が成り立たなくなります。
投資で築いた収入源はそうはなりません。もちろんどれかの銘柄が減配されたりどこかの物件が一部屋空いたりとか途中で収入が少し減ったり増えたりと何かが起きることはありますが、少なくとも、例えば同じ年収1,000万円位の不労収入が、まるで生身の働き手がクビになったかのような形である日突然丸ごと無くなるなんてことはありません。
オーナー自身の状態に関係なく、収入源は基本的に稼ぎ続けれくれます。
このように、「もっと働く」よりも「もっと稼いでくれるものを増やす」ほうが将来・老後の備えになるので、「働く」「自分を鍛える」以外の方法にもしっかりと目を向け学んでいきましょう。