まだコロナ禍は完全におさまったわけではありませんが最近また良く見かけるようになった「景気のいい額」、今日はこれについて触れたいと思います。
年収1,000万円についてです。不労収入(所得ではなく)1,000万円とは全然違います。
働く人に厳しい制度
フィナンシャルフィールドの「日本はお金持ちに厳しい国?年収1000万円になるともらえなくなる手当てや各種控除」によると、働いて年収1,000万円を稼いでも、そこから取られるものが多く、手残りや受けられる支援があまりにも少ないため、不満に思う人は多いとあります。
タイトルには「お金持ちには厳しい国?」とありますが、これはたぶん間違いで、つまりは、「働いてたくさん稼ぐ」はそれほどお金持ちではない、ということではないでしょうか。
未だに相続税が高すぎるといったことはありますが、不労所得を稼ぐ人向けには有利な税制がそろってはいるので、日本が特別に厳しいかというとそうでもないと思います。
勤労収入と不労収入
働いて給料を年間1,000万円もらう人と、働かずして家賃や配当や広告料など何でもいいですがとにかく1,000万円かせぐ人を比較した場合、損をしてしまうのは、投資先から得るお金ではなく働いて得るお金のほうです。
働いて得るお金からは経費として差し引けるものが非常に少なく、稼ぎの大部分にそのまま課税されてしまいます。配当には分離課税があったり、家賃や広告料には経費として稼ぎから差し引くことができるものが多くあります。色々差し引いた後の残りに課税されるので、同じ年収1,000万円をかせぐにしても、もっと多くのお金を手元に残せます。
また、同じお金で価値は全く変わらないのに、得るまでの苦労の大きさが全然違います。そもそも「勤労」と「不労」なので、この差もどうしようもないものなのですが、働いて年収1,000万円以上かせぐとなると、ほぼ必ずと言っていいほど激務です。簡単な仕事に大金を払う人はいません。それに対し、家賃や配当や広告料といったもので1,000万円以上稼ぐ場合は、あまり時間は掛かりません。打ち合わせたり視察をしたり手続きをしたりといった時間を労働日数で割っても、1日5~10分程度にしかなりません。稼ぎを増やしても、掛かる時間はほとんど変わりません。各所から受け取るメール件数等が増えてそれらを読むのに多少時間が掛かりますが、掛かる手間はほとんど変わりません。ですから、空いてる時間で何か別のことでお金を稼いだりといったこともできるわけです。
働く場合はそうはいきません。稼ぎを増やしたければ、勤め先で背負う責任をさらに重くして、そこにささげる時間を増やさなければなりません。
リスクという点でも両者には大きなちがいがあります。
給料1,000万円の難点は、金額がどうのというよりも、とにかくクビになったら途端に完全に収入ゼロになってしまうところにあります。40以上にもなって突然組織を出されてしまったら、次に移れるところはなかなか見つかりません。あっても給料はかなり落ちるでしょう。
家賃や配当や広告料といった源泉は、いきなり全てがつぶれるということはまずありません。ここまで分散されているものが同時に全てつぶれるようならば、その時は国の終わりか何かで、何をしても備えることができないの状況ということにはなりますが、それでも先に倒れるのは労働一本で生きる人のほうでしょう。最初に削られるのは出資者への上がりではなく雇用だからです。
不満なら制度が優遇されているほうをやるしかない
ただこうした働いて高給をもらっている人たちが「いっぱい税金を払っているのに見返りが少ない!」と感じるということは、所得再分配がある程度は機能しているということなのでしょう。格差はダメ!という声も大きいので、それに応えるべく作られた制度と見れば、たくさん稼いで取られるものが大きいのは仕方がないようにも思えます。
納得いかないと思うのは理解できますが、制度がそうなっているのでどうにもなりません。大体取りやすいところから取るように設計されているので、不満であれば、頑張って働くよりもなるべく代わりに副収入を増やすことで、税負担をおさえていくしかないのでしょう。
働いてたくさん給料をもらえれば、人からは注目されますが、税金は多く取られます。べつのところで同じくらい稼げば注目はされないものの、手残りは増えます。
見てくれを取るか、実益を取るか、どちらを選ぶかで人生は大きく変わります。