「投資=値動きでもうけるもの」ではありません。でもなかなかこれが理解されないのは、「プロ」たちが購入を勧める商品がどれも最後に売らないと、損をした/儲けられたかどうかが確定しないものばかりだからかもしれません。
なぜそうなるかというと、歳を取ったらそれまでに得たお金を取り崩して生きる、という発想だからです。
投資=定期的に上がりを得るためにやるもの
投資について人と話していると、ほとんど毎回、「投資=値動きでもうけるもの」と勘違いされているように思います。投資は本来、お金を入れた先から定期的に事前にある程度決められた料率/額の上がりを得るためにやるものなのですが、なぜか「買って売って、利ざやを稼ぐもの」と誤解されてしまっています。
おそらくこれは、よく家計相談などをやっているFPたちも自分たちでは本来の投資はあまりやっておらず、ほとんど貯金に近いようなものにしかお金を入れていないからかもしれません。彼らがいつも勧めている商品や著書などを見るとそう思います。単純に紹介料が取れるからだけではなさそうです(取れなさそうなものも紹介しているので)。
例えば現代ビジネスの「老後のお金を貯めるには「財形貯蓄」「iDeCo」どちらがおトク?」などを見ると、老後の資金準備の方法として比較の対象となっているのは、どちらとも「貯めて増やすだけ」系のものです。
財形貯蓄は税制面で優遇された天引き貯金で、家や車などを買う際の頭金を貯めたりするのによく使われたりします。給料から先取りでお金をよけるので、ある程度まとまった金額を貯めるのに役立ちます。ですが、解約は簡単なので、強制力が弱い面もあります。iDeCoはそれに対して、基本的に60歳以上でないと引き出せないため、ほぼ老後の資金準備用と思ってよいでしょう。
どちらもお金を全く貯めないでいるよりは全然良いのですが、「最後にはそれを取り崩す」ためにやるものなので、なかなか安心を得ることができません。なぜなら、お金は一度使ってしまったら手元から消えて無くなってしまうからです。
なので、こうした商品の購入も投資に含まれてしまうことについては少し違和感を感じてしまうところもあります(そう言ってしまうと、暗号資産などへの「投資」もこれらに近くはなってはしまいますが、暗号資産ではレンディングで保有している通貨を使って年利1~5%くらいの貸出料をかせぐ=一応、定期的な上がりを得ることもできます)。
これらの商品でどれだけお金を「貯められた」(殖やせた)としても、それを取り崩して減っていくのを見続けたら、どうしても心配になるはずです。
こうした手持ちが減ることによる恐怖を感じなくて済むようにするには、使っても減らないものを持つことが有効です。
本来の投資によって得られた家賃や配当や広告料などは、仮にもし全部使い切ってしまったとしても、それらの稼ぎを生んでくれるもの自体は無くなりません。現金とは違って何度でも使うことができます。
たしかに何も準備しないよりは、はるかにマシ
今回の趣旨からは少し逸れますが、前から欲しかったエビデンスも一つ拾えました。
「支出の額は収入の額に達するまで膨張する」という法則(パーキンソンの法則)というものがあるそうなのですが、これはつまり前々から触れてきた通り、人には自分が得たお金や時間を全部使い切ってしまう傾向があるため、みな普通は働いて得た給料などは、かせいだだけ全部使ってしまうようです。昇給などによりその額が増えたとしても結果は変わらず、かせぎに合わせて生活水準も上げてしまうため、どんなに稼いでも手残りはほとんど何もない、となりがちです。
ですから、財形貯蓄にしてもiDeCoにしても、投資としてみれば頼りないものの、かせいだお金を全部使い切る前に強制的に先取りしてある程度のお金を残しておくという意味では、何も残らない状態で生き続けるよりは、はるかにマシと言えます。
どちらも毎月ある程度の金額を、最初からなかったものとしてずっと貯めておくためには役立ちそうです。ただ、最後何とかしてくれるものにはなり得ないので、あまり大きな金額を入れ過ぎないほうが良いでしょう。
まとまった金額の現金を持ってそれを取り崩し続けるよりも、定期的に使えるお金が上がってくるほうが安心なので、これらとは別に投資をして家賃や配当などの上がりを再投資して…の方法で、まずは収入源の数自体を増やしていく(=毎月の上がりを増やす)ことが大事です。