相続については、「子どもには現金を残してやるよりも、稼ぐ力を付けさせておくほうが大事」という人もいます。たしかに、現金を残してやっても散財して無一文になってしまう人もいて、代わりに学力を付けさせておいた方がその人は助かるということもあるので、それも一つの考えです。
少し前までは、たくさんお勉強した人にたくさんお給料が支払われていたので、たしかにその考えは成立していました。
ですが、最近になり状況がかなり変わってしまいました。
機械の性能が上がって、人間の代わりをこなせる領域が広がってきているので、今までのように、ただいっぱいお勉強をしてきたという人には高いお金が払われなくなってきました。
これからは、現金でも教育でもなく、お金を稼いでくれるもの自体とそれらの活かし方を継がせてあげることが重要になってくると思います。
自分でかせぎ切り開くべき、と考える人は多いらしく
ファイナンシャルフィールドの「年収1000万円以上の方の意外な考え方。遺産は子どもに残さない?」によると、自分の財産は死後に自分の子どもに継がせたいと思う人は今も変わらず多い一方で、自分のお金は自分の人生を楽しむために使い切るつもりでいる人も意外と多くいるようです。
その割合も年収1,000~1,200万円の人で14%、年収1,200万円以上の人でなんと19%以上もいるそうで、コメント欄にも見られる通り、高年収の人の中にも、自分の子供には稼ぐ力をつけさせればそれで十分と考える人は結構多く居るようですね…。
それも確かに考えの一つかなと思う一方で、子供に厳しいという印象もあったので、記事の基となった「知るぽると」の調査結果(家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査] 令和元年調査結果)を見てみますと、保有する金融資産の平均額は1,139万円で中央値は419万円ともっと低く、老後に不安を感じている人の割合もかなり高いと出ていることから、「日々一生懸命働き、お金を稼いでいる高収入の方は自分の人生や楽しみのためにも、どんどんお金を使い、消費していこうという姿勢がうかがえ」るように見えて、そもそも自分の老後も心配なので、相続についてや子供のことまで心配してあげられる余裕はないというのが、実情なのかもしれません。
これらの数字は全ての年収レベルの人を合わせて出た結果ですが、貯蓄の大きさは年収の多い/少ないでは測れないとこれまでも何度か触れてきた通り、高年収だったとしても貯蓄が少ない人はたくさんいます。
昨年6月に金融庁に提出された報告書にある「老後2,000万円問題」も影響したかもしれませんね。数字だけを見て、引退するまでにとにかく現金で2,000万円用意しなければならない、と素直にとらえてしまった人は多いので、2,000万円どころかそもそも千数百万円しか持っていない(平均ですが)ので、残したかったとしても全部使い切って終わってしまうだろうと予測して「使い切る」と答えたのかもしれません。
何も残さなくていいという考えはどこから来るのか
代替わりを経験すると(祖父・祖母からなので、実の親は生きていますが)、自宅を建て直したり、継いだものの修繕や納税などにお金が掛かることを知っているので、自分の子どもにも少しでも多くお金を稼げるものを残してやりたいと思ったりします。
まだ学力が資産として機能していて、勉強する⇒働く⇒勉強する⇒働く…のライフサイクルが回っていた頃は、「子ども自分で働いてかせいで人生を切り開けばよい」で済んだかもしれません。
ですが、これだけ機会が進化して生身の人間が押されると、そうも行きません。
人間には高いお金を払ってくれなくなってきているので、自分の身一つしかなくて他にお金を稼いでくれるものを何も持っていない状態だと、お金の苦労は一生なくなりません。
現金だけを残してもあまり意味がないのは確かです。現金は一度使ったら無くなってしまうので、単純にこれを多く持たせるだけでは子どもの将来のお金の苦労は消せません。
かといって、残す現金をまったくゼロというわけにはいきません。代替わりをすると、お金が掛かります(実の両親はまだ生きていますが)。相続税の支払いは重く、祖父・祖母の時の2回分で、建て替えができたはずです。継いだものの維持や毎年の納税などにもお金が掛かるので、ある程度は残してあげる必要があります。
何より重要なのが、稼ぐ力を付けさせることです。ただ、ここでいう稼ぐ力とは、先程の記事へのコメント欄にあった従来型のお勉強のことではなく、お金を稼いでくれるものをどう使うかといった知識や考え方のことを指します。
ただ不動産や株式などを持たせるだけでなく、どうやったら入居者を付けてもらえるか・どういう銘柄を選んだらよいかなどといったことを教えてあげることで、稼ぎを増やすためにどういうものに投資をすべきか自分なりの考えを持てことができます。そうすれば、少し働くにしても、勤め先の事情に人生を左右されずに、そこそこ幸せに生きていけるでしょう。