このところ、世帯当たりの貯蓄額が急激に増えているそうです。特に昨年は大企業の多くが黒字にもかかわらず人員の大量整理を始めたからでしょうか。将来不安に一気に火が付いたのか、昨年の調査結果と比べるとたった1年間で1世帯当たりなんと200万円も増えて1,500万円以上もあるのだとか。
これだけ貯めれば、その甲斐もあって今回のコロナ禍は何とか切り抜けることができそうですが、経済危機は10年に1度くらいの頻度でやってくるので、毎回お金を積み上げては取り崩すの繰り返しでは、キツいようにも見えるのですが…。
将来が不安なのでとりあえず貯める
MONEYzineの「世帯貯蓄額は平均1500万円を突破、「子育て終了層」が本格的に貯蓄」によると、おそらくは昨年金融庁に提出された報告書にあった「老後2,000万円問題」のこともあってか、4月27日に行われた家計調査によると、1世帯当たりの平均貯蓄額は、昨年の1,293万円から200万円以上も増えて今年は1,512万円に到達したそうです。
お金を貯める目的としては、一番は自分たちの老後のためで、それについで不測の事態に備えてのことのようで、年齢別に貯蓄額の伸びを見比べてみると、特に40代と50代の子育てをすでに終えた人たちの世代の手持ちが大きく増えているようです。
ただこれらの数値はあくまで平均なので、貯蓄ゼロの世帯も2割以上あるとのことなので、中央値を見たら本当の平均の額はこれよりもっと少ないのかもしれませんね。みんなが本当にこれだけ持っていれば、今のような状況でも世の中全体がもっと楽観的なムードになっているはずです。
確かに不測の事態に備えた甲斐はあったものの…
おそらくこのようなパンデミックによる経済危機が起こると予測していた人は殆どいなかったと思いますが、「いざというときのために」と思って貯めておいたものが実際に機能しそうな状況にあるので、確かに貯めた甲斐はあったようです。ですが、経済危機は度々起こるので、この後またべつの経済危機が来たら、その時はどうするのか気にはなります。
1,500万円貯めたとはいっても、今回のように物理的な動きが制限される状況下では再就職するまでにも相当の時間が掛かります。今仕事を失った人たちは正直これからの仕事探しはかなり厳しいと言っている通り、短くても1年くらいは見ないといけないのかもしれません。これだけあれば、切り詰めれば2~3年は持つかもしれませんが、再就職できたとしてまた貯め直すにしても、同じ額に達するまでには何年も掛かります。
こうした「貯めたものを取り崩してしのぐ」を繰り返す苦労を避けるためには、ただお金を貯めるだけでなく、そのお金に働いてもらうことが重要です。
現金2,000万円 VS 2,000万円分の不動産や株式やデジタル資産など
昨年に老後2,000万円という言葉が流行ったので、試しに、①40代半ばまでに2,000万円を貯めて手元に現金として残しておいてその後仕事を失ってしまった人と、②同じく40代半ばで2,000万円を貯めてそれを元手に何かお金を生んでくれるものを買って持ち、その後クビになってしまった人とを比べてみましょう。
①②の二人とも、もともとの収入は年収450万円で、家族の生活費も400万円位とでもしておきましょう。
①の2,000万円を手元に残して持っていた人は、仕事を失ってから6か月くらいは失業保険も出ますが、丸1年経っても仕事が見つからなければ、現金の取り崩しは300万円位になります。40代半ばにもなると中々再就職先は見つからないでしょうから何年もズルズルいくことは十分に有り得ます。その場合、次の年からは生活費分すべてを貯蓄から取り崩していくことになるので、貯蓄の残りは4年強で完全に尽きてしまいます。
尽きた後はどうするんでしょうか。50近くになると再就職はもっと難しくなります。何かの仕事に就けたとしても、収入は大きく減るので生活レベルは大きく落とさないと生きられません。家族からも不満が出るでしょう。
それに対し、
②の2,000万円を不動産や株式など家賃や配当を生んでくれるものにフルで投資をした人は、何も知らない人にしてみれば、一見するとクビになった上に手持ちがスッカラカンの絶望的な状況にある人のようにも見えますが、実はほとんど何も心配はありません。2,000万円も投資をすれば、家賃や配当で手取り年収で400万円以上稼ぐことができるからです。②の人も①の人と年齢は同じなので、もう自分が希望する仕事は見つかりません。ですが生活費は投資でまかなえる状態にあります。何より注目すべきところは、家賃や配当は現金とはちがって使い切ってしまったとしても定期的にまた得られるという点です。
なので、もしそのまま仕事が見つからない状態が何年続いたとしても、お金についての心配はありません。
生活費が600万円掛かる人同士を比べても、結果は同じようなことになります。
①のように手元にお金を持ち続けた人は、毎年600万円も使っていた分だけもっと早く貯蓄が尽きてしまい生活が成り立たなくなります。何とか貯蓄が尽きる前に再就職できて、またお金を貯め直せたとしても、次に来る危機に飲まれてしまえば、また同じ苦労の繰り返しになります。
②の人も同じように苦しくはなりますが、生活費600万円のうち400万円は投資が稼いでくれるので、いい仕事にこだわりさえしなければ、年収200万円の仕事であれば何とか見つかるでしょう。一人で稼ぐのが難しければ、夫が年収150万円・妻がパートで年収50万円くらいなら、まだ45~50なので何とかなるはずです。400万円の副収入自体は働いて得ている者とはべつなので、何度危機が来ても残ってくれます。
クビになっても毎年600万円も掛けて暮らすのはどうなのかとは思いますが、それでも一応そのままの生活を続けることができます。
このように、ただ現金を貯めておいて不測の事態に備えるよりも、働かなくても得られる稼ぎ自体を増やしておけば、経済的な危機が何度襲ってきてもそのまま生き延びることが可能になります。
現金は一度使えば消えて無くなるので、何度使っても消えて無くならないものを増やしていきましょう。