老後までに現金でいくら必要になるかは、その人の戦略次第なところがあります。あるFPは1,000万円必要と言い、また昨年6月に金融庁に提出された報告書どおりに2,000万円、別の論文では500万円で十分とも言われています(⇒全国消費動向調査の結果を分析したところ、じつは65歳以上の夫婦の毎月の生活費不足額は平均で1万円強でしかないらしいので、これが一番正解に近いと思うのですが)。
金額的にどれくらい用意するのが正しいのか分からないので、
おそらく多くの人は、現金としてなるべく大きな塊を作っておき、引退後に年金収入で生活費をまかないきれない部分についてはそれを取り崩して何とかしのいでいくことを想定しているのではないでしょうか。FPたちに寄せられる相談例や回答などを見ると、そう感じます。
それとはちがうやり方として、定期的な収入を保ち続ける考えでいる人は、ほとんどいなさそうです。
どちらが正しいかは一概には言えませんが、あまり心配をせずにずっと生活していけるのは、出費が発生するごとに貯蓄を取り崩し続けるよりも、定期的な収入を得つづけるほうだと思うのです。
ファンドで備えるのは悪くないけれど、「取り崩し」の考えが…
リスクが嫌い・元金が減るのはどうしてもイヤだ、それでもやれと言うなら…という人向けのファンドの構成を見てみると国内外の債券を中心にしているので、利回りが1~2%くらいとかなり低く、借金をして不動産投資をした場合の手残りと同じくらいの利回りしか期待できません。これだと一昔前の定期預金の利率とあまり変わらないので、実質貯金をしているようなものでしかありません。
もっと利回りの良いファンドになると株式などの比率が高くなるので、今回のコロナ禍で大きく下げたのではないでしょうか。老後までに現金として大きな塊を作るつもりだったのが、逆に大きな損を抱えることになったかもしれません。でもだからといってやるなと言っているわけではありません。元々老後のためにと思って始めたならば、今売らず続けておいたほうがいいのかもしれません。ITのときもリーマン後もそうですが、長期的に見ればある程度までは回復するので、最終的にはそれなりの金額になって貯まっている可能性があります。
どちらで積み立てるとしても、引退後はそれを取り崩して使うためのものであることには変わりありません。どちらでもそれなりに大きな金額になっているかもしれません。
そのとき年金収入以外には他に何も収入源を持っていないと仮定します。すると、毎月の生活費で足りない部分はそれと取り崩して補い、何か特別な出費が発生すればその度に同じようにそこから取り崩して捻出するしかありません。
使った分は消えてなくなります。お金が減っていくと、あとどれくらい生きれるかと、だんだん不安になります。
定期的な収入で補えば、元金を減らずに済むかも
ですが定期的な収入を得られ続けるようにしておくと、そういった不安を少しでも減らせます。
例えば、
歳を取ってからは手が掛かりそうな広めの住宅に住んでいた人は、それを貸し出すことを考えてもいいかもしれません。子供も独立していれば、もう広い家は必要ないはずです。移り住んだ先の家賃が自宅が生む稼ぎを下回れば、その分は毎月の収入になります。この数万円分だけでも、金融庁に提出された報告書にあった「老後の毎月の生活費として足りない4~5万円」の大部分を補ってくれるかもしれません。
自宅が家賃を稼いでくれたら、それも立派な不動産投資です。自宅以外の不動産はどうしても買いたくない・怖いという人は、検討してみるといいかと思います。
ファンドに投資する勇気があるならば、基準価額の上げ下げにはイヤでも慣れているはずなので、自分の大事な資金の運用を人任せにするくらいなら、いっそのこと個別株の銘柄を自分で選んで持つほうがいいかもしれません。
株式も価値は日々変動するし、今回のコロナ禍のような事態が起きれば大きく下げることもありますが、景気が良い時はその逆もあるわけで、上げ下げしたからといって価値がゼロなるなるわけではありません。
「株」と聞くと、なぜか紙くずになるというイメージが強いようなのですが、働く機会が与えられなければ役立たずということで大学の卒業証書が紙くずになることはよくありますが、企業は人間よりもしぶとく(人を切ってでも生き残る)、実需が堅い事業をやっていて現金が豊富であればなかなか潰れません。また、個別株に関しては値動きばかりに目が行きがちですが、景気に連動してではありますが、定期的に配当も稼ぐことができます。
このように、家賃や配当などの上がりがあれば、60~65歳までの定年後の勤労収入、もしくは65歳以降の年金収入で足りない部分を十分にカバーできます。
貯蓄を取り崩しながらだと、元々の金額がどれだけ大きかったとしても、減ることに恐怖を感じ続けるはずです。
持っているもの(/買ったもの)に稼ぎ続けてもらい、築いた元手自体をなるべく減らさずにいくほうが、安心して暮らせそうです。実際、両親が家賃と配当だけで生活し、年金収入には手を付けていないので、机上の空論ではないつもりです。