世界的に中央銀行発行デジタル通貨の検討が行われるようになってきていますが、日本でもデジタル円が実現される可能性があるのかと気になっている人もいるでしょう。この記事では中央銀行発行デジタル通貨とは何かという基礎的なところから、デジタル円が仮に実現されたときにどんなメリットや問題が生まれる可能性があるのかを紹介します。
中央銀行発行デジタル通貨の状況と実現可能性
まずは中央銀行発行デジタル通貨とは何かという点から、世界及び日本における状況について確認していきましょう。
*中央銀行発行デジタル通貨とは
中央銀行発行デジタル通貨は英語ではCentral Bank Digital Currencyで、しばしばCBDCという略称で呼ばれています。中央銀行発行デジタル通貨は暗号資産の一種で、デジタル化されていること、法定通貨建てなこと、中央銀行の責務として発効されていることの三つの条件を満たすものです。現状として流通している仮想通貨と同様にオンライン決済に使用することができますが、法定通貨建てとなっているので一般的な消費財などの購入にも使用できることが想定されているのが特徴でしょう。
*世界的な中央銀行発行デジタル通貨に対する状況
中央銀行発行デジタル通貨が世界的にどのように捉えられているのかは、世界経済フォーラムと言われるダボス会議でトピックとして捉えられていることから容易に想像できるでしょう。ホールセール型と呼ばれる金融機関をユーザーとして捉える仕組みと、リテール型と呼ばれる個人や法人が利用する仕組みが考えられ、それぞれの可能性について各国で協議が続けられています。スウェーデンにおけるeクローナ発行の検討を代表として、中国やロシアなどでも法定通貨をデジタル化することを本格的に議論しているのが現状です。コロナウイルスの影響もあって急激にeコマースが広まったこともこのような検討を促しています。
*日本における中央銀行発行デジタル通貨の実現可能性
日本で円建ての中央銀行発行デジタル通貨として、デジタル円が実現されるかどうかはまだ不透明な状況があります。日本銀行では現時点ではデジタル通貨を発行する計画はないと明示しています。しかし、その状況に対して平成30年には衆議院から日本円のデジタル通貨に関する質問主意書が提出され、日本政府としてどのような方針でデジタル通貨によるキャッシュレス化の推進を考えていくのかを問うなど、活発な議論のきっかけが生まれてきました。
これを受けて日本銀行もイングランド銀行やカナダ銀行などとグループを設立し、中央銀行発行デジタル通貨の活用可能性についての評価の取り組みを始めています。現状としてはまだ実現に向かって大きな躍進はありませんが、、世界的な動向やキャッシュレス化の取り組みのあり方によっては近い将来にデジタル円が実現する可能性もあります。
デジタル円の実現によるメリットと暗号資産への影響
デジタル円がもし実現されたとすると個人や法人に対してどのような影響が生じるのでしょうか。デジタル円の導入によるメリットについて紹介した上で、暗号資産との関係について考察をするので参考にして下さい。
*デジタル円が実現されるメリット
デジタル円が実現されると電子化された法定通貨を使えるようになります。キャッシュレス決済が推進されているとはいえ、どんな手段で決済したら良いのかが悩みになるケースは多々あります。クレジットカードを持つのに不安があったり、電子マネーはどこでも使えるわけではないので使いづらかったりする問題があるからです。しかし、デジタル円が実現されればどこでも使えるデジタル通貨が手に入るので、不安を抱く必要なくキャッシュレス決済を行えるようになります。個人や法人としてはこのような利便性の高い通貨が手に入るのがメリットです。
*デジタル円の実現と暗号資産の関係
デジタル円の実現は暗号資産との関係に多かれ少なかれ影響を及ぼします。暗号資産とは仮想通貨とも呼ばれているもので、法定通貨と相互交換可能で代金の支払いにも利用でき、電子的に記録されていて移転可能なものを指します。ビットコインなどの暗号資産がよく資産運用の目的で用いられるようになり、多額の暗号資産を持っている人も増えてきました。このような人にとって暗号資産がデジタル円が実現されることによってどうなるかは関心がある点ですが、現時点では具体的にどうなるかは不透明です。
暗号資産はデジタル円が実現されると置き換えられてしまう可能性もないわけではありません。しかし、世界共通で取引できるという点は中央銀行発行デジタル通貨と異なります。そのため、新しい共存の仕方が検討されていく可能性が高く、中央銀行発行デジタル通貨の検討を進めていく中でどのような住み分けをするかが大きな課題になっていくでしょう。
中央銀行発行デジタル通貨の動向をチェックしておこう
中央銀行発行デジタル通貨は世界的に導入価値についての検討が行われている段階にありますが、デジタル通貨の運用に対して前向きな国が多く、世界的には導入される可能性が高くなっています。日本では前向きな導入方針は定められていませんが、協議が続けられていることからどのような方策が立てられるのかに常に気を払っておきましょう。