昨年6月に金融庁に審議会の報告書が提出されて以来、「老後に備えるとなると2,000万円もの資金が必要」といったある意味まちがった認識が独り歩きしてしまった感がありますが、これに対して、実はもっと以前に老後資金についての研究結果があるようで、それによると実際は老後生活での貯金取り崩し額はかなり少ないため、躍起になって2,000万円も準備する必要はないそうです。
ただ、もしそちらの論文のほうが事実だとしても、年金受給額は徐々に下がっているため、今のように年金で支出のほとんどをまかなえるかは分かりません。
将来いつどういった出費が発生するかは分からないとこともあるため、念のため今のところの通説となっている「毎月4~5万円不足する」くらいのつもりで準備しておいた方がよさそうです。
家計調査の際に年金収入を記載し忘れる人が多いらしく
もしかしたら、ここでも何度か参考データとして触れてきた総務省統計局の家計調査報告に不備があったのかもしれません。
毎月4~5万円不足になるかもという根拠はここにあるので、今までもし間違っていたら済みません。
オトナンサーの「「老後2000万円必要」は本当か 「500万円で十分」が導かれる論文の存在」(https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200314-00061229-otonans-life)によると、実は昨年の審議会のよりも前にすでに2015年の段階で研究者らによって「高齢者の貯蓄と資産の実態:『全国消費実態調査』の個票による分析」というものが発表されており、それによると無職の高齢者夫婦世帯の貯蓄の取り崩し額は、毎月わずか1万円程度に過ぎないことが判明していたようです。
毎月4~5万円不足とされていた昨年の報告書とは大きな金額差がありますが、記事によるとこれは総務省が家計調査を実施する際に、かなりの世帯数で年金収入があるのに記載し忘れて無収入世帯とされてしまっているため、それらの無収入世帯が年金収入の平均を押し下げてしまっているからのようです。
つまりは、よく色々な媒体で見かける単身者世帯の年金受給額の月額平均11万円・二人世帯の平均受給額毎月20万円前後というのも実際には3~4万円多いということなのでしょうか。
以前も触れたことがあるこちらの総務省統計局の家計調査報告(家計収支編)年平均結果の概要(PDF:685KB)(2019年5月10日掲載)によると、高齢で無職の単身者の可処分所得は約11万円で支出が約15万円、夫婦であれば可処分所得19万円に対して支出が23万円とどちらの世帯でも約4万円ほど足りない計算になりますが、本当は毎月1万円しか不足していないという実態と少しかけ離れているのであれば、まずこれらの11万円・20万円前後といった認識を改めないといけないかもしれません。
厚労省が発表でも平成31年の年金額も男性単身で月額約16万円、女性単身で10万円、二人世帯で22万円ということで高めに出ているようですね。
このように章ごとに発表している数値や統計の種類によっても結果が違ってくるのでどこまで何を信じて確かに迷うところもありますが、高齢者の人たちも、できればもっと年金を受給したいはずなので、じぶんたちの生活費の不足分をわざわざ調査の際に少なく申告する理由もないはずです。
誤解を与えるとして受け取りを拒否されたところからすると、こちらの数字のほうが正しいというか実情に近いのかもしれませんね。
不足額が発生するのは事実なので
これは2,000万円なんてとてもじゃないけど準備できるわけがないと途方に暮れていた人たちにとっては朗報と言えます。
毎月1万円×12カ月×30年程度だけ必要と言うことであれば、仮にもし資金がゼロでも身体さえ動けばアルバイトでも何とかなりそうなレベルです。
とはいえ、多くの人が頼りにしている年金の受給額は年々徐々にですが下がっています。
今は毎月の支出をほとんどを年金でカバーできているようですが、少しずつそれが難しくなるかもしれません。
不足分をアルバイトをして補うにしても、何度か触れているように高齢で働くのは体にはキツく、頑張っても70歳くらいまでしか続けられないのではないでしょうか。それ以降は働く意欲があったとしても年齢を理由に雇ってもらえない可能性だってあります。
その後は外出を控えたりして支出を削るにしても、受給額が減り続ければ、必要なものさえも切りつめることになるかもしれません。
毎月足りない分はわずか1万円程度と聞けば、将来に希望を持てますが、いつ何で大きな出費が発生するかは予測できない部分は大きいので、 そういった事態に備える意味でもできれば年金以外に月額数万円程度は何か別の手段で稼げるようにしておいておくと安心です。