デジタル通貨

各国の中央銀行が作るデジタル通貨とは?

どうやら世界各国で中央銀行がデジタル通貨というものを作る方向で動いているようです。皆さんはこれがどういうものかご存じでしょうか?

この動きは中央銀行デジタル通貨(CBDC)構想と呼ばれることもありますが、お札やコインとして実在する法定通貨がデジタル化したものということで、いま注目されているようです。そこで今回は、これがどういった通貨なのか、既存の暗号資産(仮想通貨)とはどう異なるのか、また今後、暗号資産にどういった影響を与えそうかについて触れたいと思います。

中央政府が新たにデジタル通貨は、法定通貨として使える

まず、いま各国の中央銀行が新たに発行しようとしているデジタル通貨(Central Bank Digital Currency)とは、①デジタル化されている、②法定通貨建てである、③中央政府の債務として発行する、という3つの基準を満たしたデジタルで法定通貨という裏付けがある通貨のことを指し、略して「CBDC」と呼ばれることがあります。

デジタルな通貨と聞くと、あたかもすでに存在する電子マネー(例えばSuicaなどの)と同じようなものかと思われる方もいるかもしれませんが、それとは異なります。電子マネーというのは、法定通貨とはちがって、決済方法のひとつとして民間の企業が発行しているものなので、中央銀行が発行するデジタル通貨とはちがいます。

法定通貨をデジタル化するメリット

現在のところ、アメリカや日本をはじめとした60カ国以上の中央銀行が、こうしたデジタル通貨発行を検討しているようですが、こうした動きが出てきた理由としては、法定通貨をデジタル化することによって、お金の利便性自体を向上させたり、お金の動きをコントロールしやすくする狙いがあるようです。

例えば今ある現金をどこかに落としてしまった場合、コインや紙幣に持ち主の名前を書いておくことなんてことはできないですから、余程の大金でなければ、ほとんどの場合はそれが戻ってくることは期待できず、無くした分だけそのまま損となってしまいます。

それに対してデジタル化された法定通貨の場合は、それがデータとして管理されるようになれば、もし無くしてしまったとしても、持っているというデータは残るので、実在するお金よりも取り戻せる可能性があります。こうした紛失のリスクを防ぐことは、発行した通貨をムダに眠らせず仕事をさせる(経済を回す)ことにもつながるので、そういう意味でも持つ側と発行する側の双方にとってメリットになりそうです。

同じように、実在する現金を持ちあること、どうしてもそれを無くしたり盗まれたりといったリスクが発生します。なので、普段あまり大きな金額の現金を持ち歩くことはできません。ですが、法定通貨がデジタル化されると、現金を持ち歩く必要もなくなってリスクは大きく軽減されます。

昨年に消費税率が引き上げられて以降はキャッシュレスでの決済も普通に行われるようになりましたが、法定通貨自体がデジタル化されることによって、買い物などもよりスムーズ・安全になると思われます。

先程も触れたように、実在するコインや紙幣は、所有者の名前を書いておくわけにもいかないので誰が持っているものなのかは分かりにくいものです。それゆえに現金は何度も移動させて一旦何かに替えてといったマネーロンダリングに使われたりすることがありますが、デジタルな通貨を導入を導入すると、お金の流れも追いやすくなるというメリットもあります。

中央銀行のデジタル通貨と暗号資産(仮想通貨)はどうちがうのか?

暗号資産(仮想通貨)もCBDCと同じように、データ上でやり取りされる通貨ということで、デジタル通貨の一種だといえます。ですが各国の中央銀行が発行するデジタル通貨は、単なるデジタル通貨ではありません。中央銀行が認める法定通貨がデジタル化されたものです。暗号資産には、中央銀行のような発行主体や価値の保証元はいません。

暗号通貨の価値は、その通貨が市場でどれだけ流通しているか、需要がどれだけあるかといったことで決まるので、通貨の価値が大きく変動することがあります。それに対し、中央銀行のデジタル通貨は、例えば円やドルのような法定通貨と同じで、通貨としての価値は中央銀行によって管理・担保されていますから、価値は比較的安定していて信用度もあります。

暗号資産とCBDCにはこのように、価値の信頼性などが大きく異なります。

CBDC(中央銀行が発行するデジタル通貨)は、暗号資産にどう影響を与えるか?

各国の中央銀行が自分たちの本当のお金のデジタル化に乗り出したということで、自分が今持っている暗号資産に何か影響が出てしまうんではないかと不安を感じる方もいるかと思います。どれ程の影響があるかは実際にCBDCが出回ってみてからでなければ分かりませんが、暗号資産の存在する意義が変わると考えている人もいるようです。

今現在、暗号資産は単なる投資目的のためだけでなく、送金や買い物など決済(支払い)の手段としても使われています。例えば買い物をする際には、現金を使うよりも、暗号資産のほうが便利で手数料も安く送金・支払うことができることから、暗号資産を使うという人も結構います。

ですが、今後CBDC(各国の中央銀行が作るデジタル通貨)が発行される場合、今まで送金や買い物の決済手段として暗号資産を使っていた人たちが、CBDCの保有・利用に転向することはあるでしょう。もともと暗号資産を投資目的で持っていたのではなければ(あくまで支払い等のために持っていたということであれば)、価値がより安定すると見られている法定通貨のデジタル版を選ぶ可能性は十分にあります。その結果、暗号資産は将来的には現在よりもさらに投資目的で持つ人が増えることも考えられます。

このように、今後CBDCが作られて流通するようになった場合は、暗号資産にも何らかの影響は出てくると見られます。暗号資産の価値は市場の動向に左右されるので、投資をしている人たちはこうした市場の新たな動きなどにも注目をしています。また彼らは各国の中央銀行が発行しようとしているデジタル通貨にも強い興味を示しているようです。これから新たに暗号資産に投資することを検討してい方は、今後CBDC構想がどのように動くかについても注視しておくと良いかもしれません。

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