以前ここでも触れましたが、ごく普通の暮らしをしてきた家庭では、老後の生活費として毎月35万円も必要ありません。
正確に毎月いくらくらい必要になるかは、家庭環境などによっても変わってくるのですが、それでも大体20~25万円あたりのラインの金額になるはずなのですが、いまだに「毎月35万円!」なんて数字が出てきたりします。先日もこの数字を「ゆとりある生活を送りたい場合は」とちゃんと解説・強調しないまま載せてしまった記事(「老後資金「月35.4万円」年金期待できない今、持つべき資産」(https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20191210-00024571-gonline-bus_all))を目にしたので、今回はあらためてその数字の信憑性を検証したいと思います。
そもそもなぜ現役世代の支出額以上に掛かるのか?
一応は前述の記事中にも、35.4万円という数字は最低限の生活を送るための生活費ではなく、余裕を持った生活をするためにはプラスで14万円程度必要なので、合計すると月35万円必要、と書かれてはいますが全体的な論調としては、あたかも「普通に生活するだけでも毎月35万円必要」と誤解してしまいそうです。
ですが、全く心配はいりません。繰り返しになりますが、老後の生活費として、普通に生活し続けていく分にはそんなに大きな額は必要ありません。
実際に最低でもどれくらいの生活費が掛かるのか、先程の記事で引用されていた生命保険文化センターの見立ての「毎月22万円~」以外にも、例えばノムコムなどでも23万9千円(ノムコム「老後に掛かる費用」(http://www.nomu.com/loan/lifeplan/k_afterretiret_01.html)より)と算出されていて、それぞれ大体22~23万円台と大きくは変わりません。
毎月35万円というとどの地域に住むのかにもよりますが、世帯年収400万円でも上位50%内に入るということは、そんなに贅沢はできませんが、おそらく現役世代の標準的な家族3~4人が普通に食べて生活していける金額です。子どもたちも独立して引退した後ならば、これの3分の2程度のお金でも十分に生活できそうです。
現役世代だってそこまでの贅沢をしていないのに、なぜ急に定年後に毎月それだけの生活費が掛かってしまうのかちょっと不思議に思います。
実例を見ると
例えば今でも自分とほぼ変わらない額の家賃や配当の収入を得ている両親を見ていると、毎月の生活費は30万円も掛けてはおらず、一体何にそれだけの金が出ていくのでしょうか…。
厚生年金も合わせた年金の平均受給額は、モデル世帯で約22万円くらいとあります(All About「気になる年金受給額、平均いくらもらえる?」より)。
このように、月22~23万円くらいの収入があれば「最低限」の生活は可能で、しかもその大部分は年金収入がまかなってくれるので、実際の不足分は月4~5万円くらいになりますが、この不足分も配当・家賃など何か少しだけ他に収入源を持てば、補うことができます。
冒頭で触れた記事中、筆者は年金破綻の可能性についても言及していますが、今のところは積立金もすぐに枯渇するようなものではなく、もともと年金制度には税金も投入されているので(確か半分くらいが国庫負担だったか?)、そう簡単に崩壊はしません。
なので、「毎月35.3万円も掛かる!」と聞いてパニックになる必要はありません。落ち着いて数字を見て考えれば、老後問題への対処は十分に可能です。