今年の4月からはじまった
働き方改革法案。
生産性を向上するために、労働環境の全体的な改善が柱となっているが、大企業の残業時間削減が下請け企業の負担を増大させてしまった。
法整備が進められ「法律の規制でこれ以上は残業できない」と言われれば、やむなく当日の業務を打ち切るか、もしくは会社にバレないように「隠れ残業」に勤しむしかない。
残業ありきの公務員の給料
来年度に就職を控えた学生たちからも、公務員への人気は、今もなお集中している。
リスクモンスター社がおこなった調査では、2020年卒業予定の就活生が希望する職業の1位が地方公務員(31.6%)、2位が国家公務員(18.0%)となった。
公務員に対して「残業なしで人並みの給料」というイメージを持っていませんか?
だが、このイメージは大間違いだ。
公務員といえども残業はあり、窓口対応が終了しても、残務や書類の作成など
「どうしても今日中にやるべき仕事」はたくさんあるのだ。
例えば、自治体の選挙になると、選挙管理委員会の職員は自宅に帰れない日も珍しくないほど多忙になる。
公務員の給料は、職階の責任度によって区分される「級」と職務年数によって区分される「号」に割り当てられた給料表で決定される。
インセンティブなど存在しない公務員の社会では、基本給と手当だけだと十分な額に達しないため「はだかの給料」などと嘲笑されるくらいだ。
同年代の会社員と同程度の収入を得ようとすれば、残業代で上積みするしかない。
希望して残業する職員が存在していたほど、公務員の給料は残業代によって支えられている。
働き方改革で給料7万円減に!
ある現職の警察官は
2019年4月の本格施行を前に、警察組織でも2018年度から強行的な残業カットが指示されたという。
40歳で警部補の彼は、一般企業でいうところの係長〜課長代理あたりの職階にいるが、働き方改革が進められる以前と現在とでは、給料が7万円も下がったそうだ。
刑事のなかでもエリートが集う捜査員である彼は、1ヵ月あたりの残業が平均で100時間程度だった。
しかし、現在では厳しい残業規制を受けて1ヵ月あたり30時間程度に抑えられている。
70時間分もの捜査量が埋められるはずもなく、「やるべきこと」は山積みになる一方だ。
だが、上司からは勤務時間が終了するとすぐに帰宅するよう厳しく注意されるため、やむなく帰宅する。機密情報が多いため仕事を自宅に持ち帰ることはできず、捜査も手薄になる。
司法制度は厳しくなる一方だというのに、捜査する時間は削られているのだから、いずれは捜査力の低下につながるのではないかと懸念している。
「3ヵ月残業ゼロ」を強行した警察署は…
ある警察署の朝礼で、署長が「3ヵ月間、全署員の残業をゼロにする」と指示した。
業務量は他の警察署よりも圧倒的に多いなか、残業ゼロという強硬策を断行したのだ。
最初のうちは、署員たちも「残業ゼロだから」と笑いながら帰宅していたらしい。
だが、1週間、2週間と時間が経つにつれて、定時どおりに帰宅することに不安を覚えはじめる。
交通課では事故処理の書類がデスクに山積みとなり、生活安全課では許認可の決裁が滞るようになった。
刑事課では事件処理が終わらないまま次の事件が発生し、下積みの基礎捜査もできないまま事件発生の書類ばかりが増えていく。
「残業ゼロ」の指示が下達されて1ヵ月が過ぎたころには、すでに取り返しがつかない状態となっていた。
警察が受け持つ行政サービスは完全に遅延し、残業ゼロどころの話ではなくなっていたのだ。
1ヵ月分の遅れを取り戻すために100時間を超える残業を必要とする署員が続出し、あっという間に残業ワースト1の警察署へと成り下がった。
1ヵ月分の債務を取り戻すために警察官が頑張るのは勝手だが、迷惑を被ったのは管轄区域の市民だ。
通常なら1週間程度で取得できるはずの事故証明が手に入らず保険金請求に遅れが生じた、といったケースもあったのだ。
残業をどれだけ抑えられたのかが幹部の評価だとすれば、たかが幹部の評価のために市民に迷惑をかけたことを真摯に反省しなければならないだろう。
働き方改革には、現状さまざまな課題が残されていることが分かりました。
今後、各企業における働き方はどのように変わっていくのか楽しみですね。