先日また労働市場の新たな動きに関する「NEC「新卒年収1,000万円」の衝撃」(https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190912-00000023-zdn_mkt-bus_all)という記事を目にしました。世界各国では以前から、国籍・年齢などに関係なく、優秀な働き手たちは高給を得られていましたが、日本ではどんなに優秀な人でも平均程度の初任給で採用されるケースがほとんどだったようです。記事によると、最近になって日本でもようやく大手企業が次々と、ITエンジニアなどのスペシャリストたちの獲得に本気になり始めたようで、「古い世代からの不満噴出などが懸念される」とありますが、この動き自体はとても良い傾向だと思います。むしろこれでもかなり遅すぎた感もあります。
「格差拡大は悪」=ひがみ?
冒頭の記事によると、NEC、ソニー、NTTグループ、DeNA、富士通などの企業はそれぞれAIやソフトウェア開発エンジニアなどのスペシャリストたちに700万~数千万円(NTTグループについては最高が一億円とも)という年収を提示して、GAFAなどの巨大IT企業による人材独占に備え始めている、とありますが、筆者も指摘しているように、それでもまだ多くの日本企業は年功型の賃金体系を打ち破れずにいます。
その主な原因は、一部の社員だけに対して突出して高い給料が支給されると、他の社員が意欲を失って腐るから、とある通りですが、働き手の傑出した力や個性を認めないというこうした悪平等が、見事に企業の競争力を下げているように見えます。
またもう一つの大きな理由として、国内の大手企業の雇われ経営者たちの多くは、旧来の雇用システムにおける勝ち組として上がってきていることも原因となっているようです。別の記事(「ソニーが「新卒に年収730万円」、最大のカベは中高年社員の嫉妬?」)では、有能な若手社員に高い賃金を払う制度導入を検討したとある企業が、よくありがちなオジサン世代からの僻みに押され、あっさりと制度導入をあきらめたとあります。また、高度人材を求める割には、邪魔な条件がついていたりと、あまり本気度がうかがえないようなケースが多いとあります。
冒頭の記事では結局のところ、彼らは能力のある人材を活かす給与体系の導入には非常に消極的で、これがゆくゆくは日本全体を三流国家に貶めると結んでいます。
どうすれば?
長年「歳をとることが偉い」と勘違いしてきた世代にとっては、新しい社員に対して高額な年収が提示されることに強い抵抗感があるようですが、彼らが活躍して新たな分野を切り開いてくれなければ、企業自体が生き残れずに、自分たちも吹っ飛んでしまうのですが…
妬み・僻みを一旦わきにやり、本来支払うべき正当な対価を支払って、非凡な能力を持つ人の起用を進めていかなければ、海外企業との競争で勝てず、ますます後れを取ることになるでしょう。