個人であっても経費として認められるものは多いため、個人事業主として投資をして資産形成をすることも可能です。ですが、法人として資産を持って投資をしたほうが、税率や事業の条件自体が有利であったり、死亡時には相続税の課税対象にされないなどの大きなメリットがあります。
個人と法人で税率や事業の条件がどう異なるか
まず不動産投資について比較してみると、不動産の賃貸で青色申告者(複式簿記で帳簿をつければ、65万円までに利益が控除される)として認められるには、個人の場合は、目安として建物5棟か部屋数を10部屋持つ必要があるようですが、法人には特にそういった条件が課されていません。また、個人の場合は毎年決められた額の減価償却を必ずしなければなりませんが、法人の場合は任意です。つまり、例えばある期にすでに赤字となると分かっている場合には、その期に無理に減価償却をせずに、黒字になりそうな年の経費のタネとして取っておくといったことが可能です。
続いて株式投資についてですが、個人の場合は株式などの売却益や配当に課せられる税率は約20%で、法人の場合は15%となります。一見すると法人のほうが安く済むようにも感じられますが、個人の場合は、株式投資については分離課税にすることができるため、株式投資でどれだけ儲けても20%しか課税されないというメリットがありますので、どちらが有利とは言いにくい部分があります。個人のほうが安いからと言ってすべて個人で持ったままにしておくと、死亡時にそのすべてが相続税の課税対象にされてしまいます。
ウェブサイトなどのメディア関連の事業については、先程の不動産と同じように、本来は個人も法人も資産計上されているメディアを5年間で減価償却することとなっていますが、法人の場合は前述の不動産の扱いと同じように、赤字が見込まれている年には無理にする必要はなく、将来の経費の種として取っておくことも可能です。
そのほか、法人が有利な点
例えば賃貸マンションに住んでいる場合は、法人がその賃貸の部屋を借りることで、「社宅扱い」とすることができるので、家賃を経費にすることができるので、法人税を節税することができます。
色々な事業を展開していると、たまに1日がかりで出張に出かけることもあるかと思います。個人の場合は、出張があっても自分で自分に対して日当を出すことはできませんが、法人の場合は、日当を支給してそれを経費にすることが可能です。
個人の場合には生命保険に加入するとその保険料の一部を控除対象にすることができますが、毎年4万円程度の小さな枠でしかありません。ですが、法人で、法人役員向けの生命保険に加入すると、保険の種類によっては保険料全額もしくは少なくとも半分を経費(=この場合はもう半分は資産として計上される)にすることができるので、節税効果が大きくなります。また、法人では小規模企業共済などに加入することが可能で、この保険料は全額経費にすることができます。しかもこの共済の掛け金は掛け捨てではなく、満期には手元に帰ってくるのです。
また法人の場合、退職金の支給が可能で、法人はこの支給額を経費にすることができます。また、受け取る個人にとっても、退職金は税制上優遇されているため、それほど大きく課税されずに現金を受け取ることが可能です。
交際費だけは個人が有利
個人の場合は、交際費の金額に上限がありません。ですが、法人の場合は、年間に800万円までしか経費にできません。まあこの金額以上にお金を使いまくることはないでしょうが…。
法人化のメリット・相続対策
法人は自分が生きている間に大きな助けになってくれるだけではなく、自分の死亡時にも非常に強い力を発揮してくれます。個人で全てを資産を持っている場合、いくつかの節税策を使っても、かなり高額な相続税を課されることがありますが、相続税は個人に課される税金ですから、法人には関係がありません。
つまり最初からほとんどの資産を法人に待たせておいて、その法人の株式を早い段階で後継者に生前贈与しておけば(ちゃんと株式譲渡の議事録を残し、少額の贈与税を毎年しっかり払う)、あまり相続税を課されずに資産を継承させることが可能です。
法人を持つと、毎年の法人確定申告に30万円前後の税理士費用+法人住民税均等割り7万円が掛かってはきますが、その金額を大きく上回る額の節税ができて、相続でも有利になりますので、ある程度の規模に達したら、資産管理法人を持つと良いかと思います。