ちょうど三年前のこの季節くらいのことですが、ある部屋で、入居者さんが危うく死にかけたことがあります。管理会社さんに、一部屋分だけ家賃の滞納があるので、そろそろ家賃保証会社さんが訪問に行く、との連絡を受けました。そのときはまだ、滞納が長期になると回収がより難しくなり厄介なので、早期に出てもらうしかないかな…程度にしか思っていたのですが、事態はもっと深刻なようでした。
滞納の知らせをもらってから2~3週間は、管理会社さんにも頻繁に訪問してもらっていたのですが、毎回応答がなく、緊急連絡先となっている方から電話をしてもらっても全く反応がないようなので、さらに詳しく調べてもらったところ、「すでにガスと電気が止まっており、ついには水も最近止まったらしく…」という状況でした。
訪問時にはその都度、連絡を欲しいという手紙を入れてもらっていたのですが、毎回、次の訪問時にはそれが無くなっていたようではあるので、どうやら入居者さんはまだ動けてはいる(?)様子でした。
最後のライフラインである水が止まるのはよほどのことで、この部屋でもし死なれでもしたら困ると思い、「すぐにでも警察にも安否確認という形で立ち会ってもらい、部屋の鍵を開けて入ってください」とお願いをしたところ、幸い入居者さんは無事で、どうやら病気で動けず、かなり衰弱した様子だったようです。
とりあえずは無事だったので、すぐに近くの病院に運び暫く療養してもらい、後のことは入居者さんの回復を待ってからでもよいだろうということにしました。
後日、倒れるまでの経緯などを詳しく聞いたところ、「ここ数年は病気がちのため仕事は辞めざるえなくなり、お金も尽きて、暑さにやられて体調を崩し…」ついには倒れてしまったようでした。すでに身寄りもないようで、出てもらうにも行く当てもなさそうな様子だったため、無理に追い出すのもしのびなく、最後の手として、「住み続けるための条件は、長年あなたが働いてきたこの市に生活保護を申請してもらい、生活保護費を受給してもらうこと」として、加えて、「ケースワーカーから生活や健康の指導、訪問があったら、それは拒否しないこと」、要はこの部屋で生きることを諦めないことを条件として契約更新しました。
一カ月ほどで申請が通って入居者さんは無事に生活保護の需給ができるようになり、健康状態も回復したようで、一応これで状況はひと段落着きました。
高齢化と付き合う・社会貢献
生活保護の方を抱えることで、「この物件を売りにくくなる」「高齢のリスクがある」と見る方もいますが、若くてもお金が払えない人という方は結構います。高齢の方を避けたところで、高齢化は今後も進み続けて、いずれ避けることはできなくなりますし、保険の特約(毎月の保険料も少額)でこういったことはある程度軽減も可能です。
もともとこの物件は祖父から継いだものであり、自身で投資をしたわけではないため、ほとんどタダで今まで稼ぎを得てきました。建物が使える限りは持ち続けようと決めていたので、生活保護者を抱えていてもそれほど問題はありません。市が保証人なので支払いも堅く、生活保護を受けている方もどこかには住む場所が必要です。自分もそこそこ幸せに暮らさせてはもらっているので、これも社会貢献と思うようにしています。