マネー&ライフ

インボイス制度開始(2023年10月)による投資業や副業への影響

「これ以上はウチの責任で雇用者を一生面倒見続けることはできない」として、世の中全体が副業推奨の方向に進んではいますが、その流れを止めてしまいかねない制度が導入されつつあることを、すっかり見落としていました。

皆さんは、三年ほど前に可決・成立した税制改正関連法によって、2023年10月から実施予定となっている「適格請求書等保存制度」(インボイス制度)というものをご存じでしょうか? 

これから副業を始めようと検討している方にとっても関わってくる部分が多く、細かくはまだ色々調べる必要があるのですが、とりあえず分かったことは、このインボイス制度が始まると請求書発行の事務負担が増えて、今まで課税所得の額が低くて消費税納付が免除されていた事業者でも、制度の導入後は消費税を納めななければならない、等です。

国税庁ホームページの平成30年4月発行のリーフレットhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi
/keigenzeiritsu/pdf/300416.pdf より

インボイス制度の導入意図や背景

まずはこのインボイス制度が導入されることになった背景などを見ていきたいと思います。

①軽減税率の適用に対応するため

今まで納付すべき消費税がどのように計算されていたかを簡単に言うと、「売上に対して支払われた消費税-仕入れた商品に対して掛かった消費税」で出た差額分を納めればよいという形になっていました。

つまり、例えば何かの商品を仕入れて、それを売るという商売の場合:

商品仕入 10,000円(消費税:800円)
商品売上 20,000円(消費税:1,600円)
納付すべき消費税の額⇒ 売上時の1,600円-仕入時の800円=納付税額:800円

といった感じで、消費税額が計算されます。

基本的に上記の構図自体は変わらないのですが、今年10月からは消費税の税率が10%に上がり、一部には軽減税率が適用されることになるため、商品ごとの適用税率や税額がわかる書類がなければ、正しい税額を記録することが難しくなります。そのため、取引内容や適用税率が記載されたインボイスという書類が必要になります。

②益税をなくす意図がありそう

現行の制度では、年間の課税所得(売上から経費を差し引いた残り)が800万円以下の場合は消費税の納付が免除されていますが、事業の内容によっては実際には顧客から消費税が支払われていたりもします。

今まで消費税納付が免除されていた場合は、このように実際支払われていた消費税分をそのまま貯めこんで「益税」とすることができていましたが、税務署の側から見れば、自分たちに収められるべきものが猫糞されたようなものですから、どうしてもなくしたかったのでしょう。

③小さな事業者が商取引から排除される?

インボイス制度が始まると、「益税」で大きな恩恵を受けていた事業者は負担が増えることになります。

インボイス制度の導入後は、前述の取引内容や適用税率など法で定められた記載事項があるインボイス(適格請求書)というものがなければ、商品の仕入れに掛かった消費税を控除することができない、とされています↓

国税庁ホームページの平成30年4月発行のリーフレットhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi
/keigenzeiritsu/pdf/300416.pdf より

そうなると、事業者としては、税負担が大きく増えるようなことを防ぐためにも、インボイスを発行することができる事業者からしか商品の仕入れ/サービスの提供をしなくなってしまうかもしれません。

しかも、そのインボイスを発行できるのは、消費税を納付する事業者だけとされていますので、小規模な商売をしている事業者は、商取引から排除されてしまう可能性もあります。

インボイスを発行できる事業者になってビジネスを続けていくためには、まずは税務署に届け出をして「課税事業者」になる必要があり、消費税を納付する・インボイスを発行する、という負担を背負うことになります↓

国税庁ホームページの平成30年4月発行のリーフレットhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi
/keigenzeiritsu/pdf/300416.pdf より

「インボイスを発行できない=商売がほとんど成り立たない」となると、事業者としては廃業するしかなく、どこかの企業に雇用されて生きる、などの道を進むなど考えることになります。

この制度導入によって、何となく、自分のビジネスで独立して生きようとしている人の数を減らして、「働いて高給を得る人たち」と「非正規雇用者として生きる薄給の大多数の人」という2層に分けて簡単に管理したいという意図が見えてきたりします。

どこかの調査結果では、大企業や大きな組織の正規雇用者の年収は600万円を超えて、非正規雇用の場合は170万円くらい、とありましたが、何だか本当にその2層の階級に分けて人間を管理をしやすくするためのもののように見えてしまいます。

投資業・副業とインボイス制度

幸い今の事業では、不動産に関してはもともと消費税が非課税となっていて、株式については源泉税が先に差し引かれるので、あまり大きな影響はありませんが、ネット広告に関しては、報酬が支払われる際に、先に消費税分が引かれてから入金されることになるのか、それとも課税事業者の登録をしてインボイスを発行するように求められるのか、問い合わせてみる必要がありそうです。

前々から先生が「投資業メインなので、大きな影響はないですよ」と調べてくれていたものの、そもそもこういったことが進められていること自体にはもっと早めに気づいて対策を打たなければならないと反省していることろです。

それにしても、このまま制度が開始してしまうと、新たに起業しようと思う人が増えるようには思えませんので、新しいビジネスの芽を摘んでしまうようなことがないよう、せめて新しくビジネスを始める事業者に対しては益税を数年間でも認めてあげないと、なかなか新しいビジネスが誕生しにくい気がします。

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