先週、半年ぶりに愛媛県今治市にあるアパートの管理会社さんへのご挨拶も兼ねて、現地の様子を視察に行きました。今回も管理会社の店長さんにお付き合い頂いて、各入居者さんにも直接ご挨拶してきました(店長さん、お忙しい中本当に有難うございました)。
このアパートは、十数年前に祖父から相続した物件の一つで、元々はタオル工場用に貸していた跡地を利用して建てたものです。
建物からバス停までは徒歩で数分、駅までは十数分掛かります。町の中心からこれだけ離れると、普段の移動に公共の交通機関を利用している人は少なく、基本的に車での移動がメインとなります。各世帯用に駐車場さえ完備されていれば、ほとんどマイナスにはならないようです。
この物件を今の管理会社さんに預かって頂いてから数年経ちますが、まだ退去が発生していません。入居者の方が住んでいる期間は、数年~十数年と、所有するほかの物件と比較するとかなり長めです。全戸ともファミリータイプの2DKの部屋で、全て社会人の方に貸しています。
ここは海のすぐそばにあって、小さな船も多く係留されています。台風の到来時や満潮時には水が近くまで迫るため、少々怖くも感じられますが、引き潮の時は穏やかです。
少し行った先には、砂浜もあり、夏には海水浴ができるようです。太平洋側ではないため、波もおとなしい印象です。
人口が多い地域ではないので、入居者の募集は簡単ではありません。ですが、町の中心部よりも海近くの静かな環境を求めている方もいるとのことで、そういった方々に気に入ってもらっています。また、前述のとおり、この町は基本的にクルマ社会のため、車さえあれば移動には然程困らず、中心部に出るのも簡単なので、この立地条件が特に不利なわけではないようです。
「不動産は立地が全て」とか聞くこともありますが、半分本当で半分間違いなのかもしれません。確かに、駅文化の発達した首都圏や地方中核都市では、駅近であることが選ばれるための条件になります。ですが、クルマ社会の地方都市では「駅近」「中心」であることが有利にはならないことがあります。行政機関が町の中央に集まっているのは大都市と同じでも、ロードサイドには生活に直接関係がある大型量販店やショッピングセンターが揃っており、町の中心部よりも、郊外のほうが断然便利なため、必ずしも中心部に住む必要がありません。
町の中心からかなり離れたこの地域には、工場も幾つか点在していて、今所有する物件近くの中古車販売業者さんには大変お世話になっています。こちらの工場では、従業員さんを近くに住ませたいとのことでしたので、3部屋を「社宅」として借りてもらっています。
毎回、視察の際には挨拶に伺うのですが、作業所はいつもフル稼働で、社長さんも出張で留守のときもあり、頻繁にスマホを片手に東南アジアへ行き来されているようなので、かなり繁盛している様子です。暫くは借り続けて頂けるかなと思ったりもします。
今治の賃貸市場
せっかくの機会なので、今回も周辺の物件をチェックしたところ、新築は戸建てが多いようです。ここ数年の間に、この地域にも大手の業者さんが賃貸物件を幾つか建設したとのことですが、入居者募集には苦戦していて、新築だからといって以前のように高い賃料を取れるわけでもなく…という様子でした。建設業者さんと発注したオーナーさんとの間でどのような取り決めをしているかは分かりませんが、完成後に一定期間で満室での引き渡し、とある程度の約束をしていたならば、双方にとってかなりキツそうです。
賃貸住宅の専門業者さんたちは、建て続けなければ倒れる、という事情もあり仕方がない面もありますが、高齢者の富裕層向けに「借金をすると、資産額を圧縮できますよ!」と相続対策として強く売り込み過ぎて、供給量を一気に増やしたため、自分たちの首を絞めてしまったようにも見えます。新築同士でも入居者を奪い合い、なかなか部屋が埋まらない/埋まりにくいという実態が広まれば、受注件数はかなり減ってしまいそうです。
入退去はどのタイミングでも発生しうるため、決して他人ごとではありませんが、ほとんどのオーナーさんは、所有するだけで建設後は何もしていません。継いでから十数年、ここで試した色々な方法(新たな設備の導入や客付けのインセンティブなど)や経験はこの先も活かせるので、何とか経営し続けられるのではないかとは思っています。
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