SuicaはJR東日本が提供している、関東地方では特に普及率の高い交通系ICカードです。このSuicaカードに、仮想通貨をチャージできるようになるかもしれないということがニュースとなり、注目を集めています。この取り組みに関わるのは、Suicaのほかにもう1社。DeCurret(ディーカレット)という、仮想通貨決済を事業とする会社です。ここでは、Suicaに仮想通貨をチャージできるようになるメリットなどを解説します。
SuicaカードとDeCurret(ディーカレット)
Suica(スイカ)は、電車やバスなどの公共交通機関で使用することのできる、JR東日本が提供する交通系ICカードです。交通機関だけではなくコンビニなどでの買い物の際にも、電子マネーとしての利用ができます。また、おサイフケータイなどを持っている人はモバイルSuicaを入れることで、携帯電話をSuicaカードと同じように使うことができます。Suicaのような機能を持っている交通系ICカードは全国にありますが、2013年より交通系ICカードの相互利用が促進され、例えばSuicaを、JR東日本管轄外の大阪などでも使うことが可能になりました。逆も同様です。
Suicaは何といっても、1日の電車の利用者数が桁違いに多い首都圏をカバーしていますから、全国でも最も普及しているICカードになります。2018年7月に一般社団法人金融財政事情研究会というところが発表した、交通系ICカードの発行枚数と加盟店数のランキングがあります。それによると、Suicaの発行枚数は7,161万枚、加盟店数が23万7,750店舗と、他を大きく引き離してのダントツの1位です。日本の人口を1億2,000万人とすると、2人に1枚以上持っていることになり、普及率の高さが分かります。
では、もう一方の主役のDeCurret(ディーカレット)というのはどのような会社でしょうか。「Suicaはもちろん持っているけれど、ディーカレットは初めて聞いた」という人も、多いかもしれません。ディーカレットは2018年に設立された、仮想通貨決済事業を行う会社です。いわゆるフィンテック企業ということになります。株主には、多くの人が知っているような大手企業が名前を連ねており、2019年3月には、金融庁から正式に取引所としての認可を受けました。今回の、Suicaへ仮想通貨をチャージできるようにするというニュースも加わり、注目度が高くなっている会社です。
Suicaに仮想通貨をチャージできるようになると、どのようなメリット・影響があるのか?
Suicaに仮想通貨をチャージできるようになることで、どのようなメリットがあるのでしょうか。まず、Suicaへのチャージ方法が増えるというメリットが、真っ先に考えられます。現在のところ、Suicaにお金をチャージしたいときには、現金での入金になるのが基本です。モバイルSuicaなど、クレジットカードでチャージができるケースもありますが、ビューカードをはじめとする、ごく限られた種類のクレジットカードでしか行うことができません。仮想通貨でチャージ可能となるということで、現金以外のチャージ方法が1つ増えることになります。
次に、仮想通貨の取引を後押しすることになるという利点もあるでしょう。最初に述べたように、Suicaは非常に普及率の高いICカードですから、Suicaと関係を結ぶことによって仮想通貨に対する認知度も高まり、結果として、仮想通貨取引を始める人の数も多くなると思われます。また、仮想通貨を決済で使用することができるお店はまだまだ少なく、使用できるお店であっても、決済する人はあまりいないのが現状です。Suicaにチャージできるようになることがきっかけとなり、決済に仮想通貨を使おうと考えるお店や人が、増えることも予想されます。
ここまではメリットと言える点です。しかし一方で、デメリットとまでは言えないものの、今後考えていかなければならない点もあります。それは税金の問題です。仮想通貨の取引も、株取引などと同様に利益が出たときにはその金額に応じて税金を払わなければならないということが、国税庁によってしっかりと示されています。具体的に想定される仮想通貨取引で税金がかかるケースというのは、仮想通貨を売却した場合・仮想通貨で商品を購入した場合・仮想通貨同士の交換を行った場合・マイニングや仮想通貨の分裂によって、新たな仮想通貨を取得した場合などです。これらのときに、取得価額よりも売却額の方が高いなどで利益が出ると、税金がかかるのです。
そしてSuicaは、チャージするときには日本円で行われます。つまり、仮想通貨でSuicaにチャージするということは、利益確定売りをして日本円に交換するという行為に他ならないのです。そのため、仮想通貨を取得したときよりもSuicaにチャージしたときの方が価値が上がっていると、税金を払わなければならないということになります。ところで、仮想通貨取引で出た利益は、税務署への所得申告時には雑所得に分類されます。給与所得以外の雑所得が年間20万円以下のとき、税金の申告は不要とされますが、チャージするたびにそのようなことを気にするのは、非常に面倒でしょう。
「今回で雑所得が20万円を超えそうだから、チャージするのは止めた方が良いかな」などと躊躇する人が増えるとすると、仮想通貨の普及・決済手段の多様性という、事業のメリットが失われかねません。この税金の問題に関しては、今後さまざまな議論がなされると考えられます。
Suicaへの仮想通貨チャージには便利な点もあるが、今後解決しなければならないことも!
Suicaカードという、普及率の高いICカードに仮想通貨をチャージできるようになることで、チャージ方法の選択肢が増えるだけではなく、仮想通貨取引の拡大などのメリットが考えられます。決済手段が多様になることで、利便性も増すでしょう。しかし原則として、仮想通貨を日本円に交換して利益が出たときには税金がかかることから、Suicaへ仮想通貨をチャージしたときの税金処理については、今後の動きに注視が必要です。