仮想通貨はオンラインで電子的な決済を行うことができる、新しい形式のデジタル通貨です。あらかじめ発行する総量が決められており将来の値上がりが期待できるため、近年では投資の対象として仮想通貨を購入する人が増えています。仮想通貨では様々な暗号化手段による保護が行われていますが、一方でその管理に関するリスクや安全性などが大きな問題となっています。
CEOの急死によりパスワードが不明となり仮想通貨にアクセスできなくなっています!
カナダの仮想通貨取引所で創業者が急死したことにより、顧客から預かった仮想通貨が引き出せなくなる問題が発生しました。急死したのはカナダの仮想通貨取引所クアドリガCXの創業者であるジェラルド・コットンCEOで、2018年の12月にインドで持病のクローン病により死去したのです。その後2019年1月にジェラルド・コットンCEOの妻で相続人であるジェニファー・ロバートソンは、カナダ最高裁判所に対する倒産保護に関する訴訟手続きを開始し、クアドリガCXの顧客約115,000人から預かった1億8千万カナダドル(約150億円)分の仮想通貨にアクセスできないことが判明しました。
クアドリガCXが顧客から預かった仮想通貨を引き出すための鍵となるパスワードは、ジェラルド・コットンCEOが一人で管理していました。妻で相続人であるジェニファー・ロバートソンは夫の死後パスワードが書かれたメモなどを探したけれど見つからなかったこと、またパスワードを解析する専門家に依頼したけれど解決に至らなかったことを発表しています。仮想通貨の管理にはホットウォレットと呼ばれるオンライン管理と、コールドウォレットと呼ばれるオフライン管理が併用されることが一般的です。クアドリガCXでは顧客から預かった仮想通貨の大半を安全性の高いコールドウォレットで管理し、取引に必要な分をその都度ホットウォレットに移動させる手続きが行われてきました。ジェラルド・コットンCEOはコールドウォレットのパスワードを誰にも知らせず自分だけで管理していたため、そのことが今回のトラブルの原因となったのです。
一方でクアドリガCXを利用する顧客からは、様々な疑問の声があがっています。1億8千万カナダドル分の顧客の資産をジェラルド・コットンCEOがたった一人で管理していたことや、パスワードの保全措置がまったく行われていなかったことを不自然だとする意見が多いようです。さらにクアドリガCXは数年前から訴訟や支払いの遅延などの様々なトラブルを抱えていたため、今回の問題については「ジェラルド・コットンCEOの死は本当なのか?」「顧客の資産の計画的な持ち逃げなのでは?」と考える人も多くなっています。
仮想通貨の様々なトラブルに備えるためには利用者自身が管理を行うことが必要になります!
日本の銀行にはペイオフという制度が適用されるため、何らかの事情で銀行が倒産した場合であっても、1千万円までの預貯金に関しては全額の補償を受けることができます。一方で仮想通貨の取引所にはそのような制度は適用されないため、トラブルに関するリスクは利用者自身が負担することになるのです。クアドリガCXの問題は海外の事例であり先行きは不透明ですが、利用者は取引所に預けた仮想通貨を取り戻せない可能性が高いといえるでしょう。
仮想通貨は比較的新しい金融資産であるため、その位置付けなどについては今後の法整備が待たれる状況となっています。例えばFX投資で投資会社に預けた証拠金は以前は保護の対象外となっていましたが、現在は法律により証拠金全額の信託保全が義務付けられ、投資会社が倒産した場合でも信託先の銀行から証拠金が返金されます。仮想通貨の取引所にも今後は同様の制度が適用されることが予想されていますが、現時点では投資家は自分の財産を自分で守ることが必要とされています。仮想通貨の管理は取引所に任せるのではなく、ウォレットを活用して自分で管理を行う方法を検討しましょう。
ウォレットとは財布のようなものであり、webウォレット・ソフトウェアウォレット・スマホアプリのウォレット・ハードウェアウォレット・ペーパーウォレットなどの種類があります。ただしwebウォレット・ソフトウェアウォレット・スマホアプリのウォレットについては、オンラインで仮想通貨の管理を行うためセキュリティの面で注意が必要です。ハッキングなどの被害が心配な人は、オフラインで管理を行うハードウェアウォレットやペーパーウォレットを選択してください。ハードウェアウォレットは専用の端末で仮想通貨を管理する方法であり、ペーパーウォレットは紙形態(印刷物)で仮想通貨を管理する方法になります。いずれも仮想通貨の取引に必要な秘密鍵をオフラインで保管できるため、セキュリティが確保され安全性が高いことが特徴となっています。
仮想通貨を自分で管理できるウォレットを活用しましょう!
仮想通貨に関する様々なリスクは、現時点では利用者自らが負担することになります。仮想通貨は取引所に預けるよりも、ウォレットで管理する方法が安全で安心です。セキュリティが不安な人にはオフラインで秘密鍵を保管できる、ハードウェアウォレットやペーパーウォレットの活用をおすすめします。